被災地の元気企業 40
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収入を安定化させ 若い人が安心して働ける場所を桃浦に 「このままでは桃浦の漁業は衰退する」 震災前、宮城県石巻市桃浦の漁師達は浜の水揚げの多くを占めるカキ養殖の仕事に限界を感じていた。他の多くの漁村同様、桃浦の漁業においても燃料高、設備投資コストの増加、生産者の高齢化、後継者不足と問題が山積していた。そうした中、2011年3月に震災が発生、桃浦は壊滅的な打撃を受けた。 もともと桃浦は限界集落に近く、将来的な自然消滅が懸念されていた。「単なる復旧ではいずれ同じ姿になるだけであり、将来に向け集落が維持できるような復興が必要」との考えの下、桃浦のかき養殖に企業的経営手法を導入するべく、2012年8月、地元漁業者15名により「桃浦かき生産者合同会社(以下、「合同会社」)」が設立され、同年10月、仙台市の有力水産卸事業者である㈱仙台水産が出資参画した。そして2013年9月、復興特区制度の活用により、合同会社に漁業権が付与され、本格的に事業を開始した。 「桃浦の漁業者は皆、将来に危機感を抱いていたものの個人の力では何もできなかった。合同会社の設立により、企業が若い人や漁業をしたい人を雇用し、桃浦での定住化を図ることで、桃浦での漁業継続と村落の再生ができる」大山氏は合同会社に桃浦の将来を託したのである。 取り組み(事業内容) 桃浦かき生産者合同会社の挑戦 代表社員 大山 勝幸 氏 桃浦かき生産者合同会社 ビジョン ● 若い人が安心して働ける場所を桃浦に作りたい ● 桃浦のかきを世界のブランドへ ● 桃浦の漁業継続、そして、村落の再生へ 挑戦事例 被災漁業者により設立された民間企業による漁業復興 農林漁業、石巻市 「桃浦かき」の特徴は、身が大きく、ミネラル分が豊富な点である。 この理由として、もともと桃浦が、牡鹿半島の山林や森に囲まれ、北上川の流れに運ばれた養分が注ぎ込む良好な漁場であることに加え、 ̄ 「桃浦かき」の特徴 漁業者が設立した企業による「桃浦かき」の 生産・加工・販売(6次産業化) 合同会社は、社員(出資者)は桃浦の漁師15名、及び仙台水産の合計16名で構成されている。漁業者自らによる生産・加工・販売の一体化(6次産業化)を行う体制を構築し、定款で定める事業として、①かきの養殖・加工・販売、②生鮮魚介類・水産加工品の卸・販売を行っている。 合同会社が、過剰養殖を避けることで、品質の高さを追求した生産を行っていることが挙げられる。 合同会社では、仙台水産の協力のもと、「桃浦ブランド」の確立に力を入れており、桃浦かきの品質の高さを消費者に認知してもらうため、テレビCM・ブランドブック作成・HPでの宣伝等によるPRを積極的に行っている。また、仙台水産と協力して広げた大手量販店(スーパー)、外食チェーン、デパート等の販路を中心に、店頭販売の強化により消費者に対して「桃浦ブランド」の認知度を上げることで、リピーター作りに取り組んでいる。 ブランディング・販路開拓 82

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