被災地の元気企業 40
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挑戦事例 農林漁業、釜石市 泳ぐほど鮮度が良い「泳ぐホタテ」を購入したお客様からは美味しさの驚きだけでなく「箱を開けたらホタテに水をかけられました」という驚きと感動の便りが㈲ヤマキイチ商店に届く。創業時はわかめ販売を主としていたが、22年前の君ヶ洞社長の経験が泳ぐホタテの誕生につながる。「私はいつも前浜でとれる美味しいホタテを食べて育ちました。それは日本全国どの地域の人も同じだと思っていました」しかし当時は鮮度管理の技術も低かったため、「初めて見たお店に並ぶホタテは鮮度が悪く、いつも食べる前浜のホタテとは全く違った」と君ヶ洞社長は話す。 「貝の大きさ、味、鮮度の良さと三拍子揃った釜石の最高品質のホタテを、どうすれば全国のお客様に届けられるか?」 知恵を絞り、全速力で走り続け、挑戦開始から5年、ついに釜石で採れたホタテをそのままの鮮度で全国のお客様に届けることに成功し、泳ぐホタテが誕生した。 その後、泳ぐホタテは全国のお客様(選ぶプロ)に支持される人気商品に成長し、同時に釜石の職人気質の漁師(作るプロ)に利益と誇りをもたらした。 しかし、震災が全てをゼロに戻してしまった。いけす・加工場・家屋ともに全壊・流失してしまったのだ。 この時から君ヶ洞社長の第二の挑戦が始まった。22年前の挑戦との最大の違いは、社長の志を受け継ぐ専務、常務とともに、親子3人での挑戦であることだ。自社だけでなく三陸全体が物心両面で潤うことを目指した3人の挑戦が、今まさに始まった。 取り組み(事業内容) 徹底したホタテの選別 とにかくお客様に最高品質のホタテを届け、感動してもらいたい。 しかし、いくら釜石、三陸のホタテが良質といっても、全てが大きさ、味、鮮度の三拍子揃ったホタテという訳ではない。多くの仕入れ業者は少しでも安く仕入れたいと考え、一方の漁師も一枚あたりのホタテの値段が変わらないのであれば、一枚でも多く養殖した方がいいと質より量を優先することがある。その結果、限られたスペースで多くの貝を養殖すると栄養不足の状態になり貝の大きさと味が低下する。そこでヤマキイチ商店では、三拍子揃ったホタテを日本一の浜値で仕入れるようにしている。職人気質の志の高い漁師が正当な評価を受けることで、さらに素晴らしいホタテが育てられる。その素晴らしいホタテがお客様に届けられることでお客様に感動を与え、三陸のブランドを守ることにつながる。 独自の配送方法 次に大事なのは、ホタテを活きたまま届けること。これにより、釜石の三拍子揃ったホタテと感動を届けることが可能となる。 たった一人のお客様が少しでも鮮度に不満を持つのなら通信販売をやるべきでないとの信念で試行錯誤を重ね、配送も季節ごとに梱包方法を変えるなど徹底的にこだわっている。今では100%活きたまま届けることが可能になっているが、鮮度管理は自社独自のノウハウだけでなく漁師の協力も必要である。収穫から販売まで徹底した鮮度管理を行うことで、他社に真似できない鮮度での提供が可能となった。 お客様に最高品質の ホタテを届け続ける 最高品質へのこだわりで漁業の地位向上を図る 代表取締役 君ヶ洞 幸輝 氏 有限会社ヤマキイチ商店 ビジョン ● 最高品質の「泳ぐホタテ」を釜石から全国へ届ける ● お客様には感動を、漁師には誇りを感じてもらう ● 三陸をあるべき姿、つまり物心両面で潤う三陸に ヤマキイチ商店の挑戦 80

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