被災地の元気企業 40
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「大船渡温泉」を復興 のシンボルにし、復興後も若い人が働ける場所をつくりたい 2014年7月31日、復興のシンボルとなることを目指して、大船渡湾口から太平洋を一望できる場所に「大船渡温泉」がオープンした。 大船渡を代表する観光地である碁石海岸で民宿「海楽荘」を営んでいた志田氏は震災前から日帰り入浴施設を建てるべく準備を進めていた。しかし、震災により大船渡では多くの宿泊施設が津波の被害を受け、このままでは復興が遅れてしまうと危機感を持つ。海楽荘は幸い津波による被害を免れたものの、「復興のシンボル、そして復興後も若い人が働く場所をつくりたい」との思いを持った志田氏は、日帰り入浴施設ではなく、復興の拠点となる宿泊施設「大船渡温泉」の建設を決断する。 大船渡温泉の建設を決断した志田氏であったが、本当に自分ができるのか?お客様・従業員はついてきてくれるか?資金は集まるのか?借りたお金をきちんと返済できるのか?様々な不安や葛藤との闘いが始まった。しかし、建設を決断したときに志田氏が抱いた思いは日に日に強くなっていった。また、震災前から大型宿泊施設が少なく観光客が通過してしまうことの多かった大船渡では、宿泊施設の建設に対する地元の期待が大きかったことも志田氏の背中を後押しすることとなる。 「今まで地元の人に助けられ、支えられて、ここまでやってくることができた。地元の大船渡のためにも、大船渡温泉は、今、自分がやるしかない。自分を信じて突き進むしかない」「事業は長く続けることが大事であり、1000年続く企業を目指す」 志田氏の挑戦が大船渡で始まったのである。 取り組み(事業内容) 復興のシンボル「大船渡温泉」 総客室数が69室、宿泊収容人数が230名の大船渡温泉は、日帰り入浴も可能な天然温泉を有し、地元客の利用も多いことが特徴である。「観光客も大事だが、まずは地元のお客様に喜んでもらうことが何より大事」と志田氏は語る。志田氏自ら仕入れる大船渡の海の幸は新鮮で、ボリューム満点の名物料理が目当ての地元のお客様も多く、4部屋ある宴会場は曜日を問わず予約で一杯になる。また、地元の木材を利用した薪ボイラーを採用し、化石燃料に頼らない地元資源の有効活用も図られているという。 軽トラ市の開催 開放して「軽トラ市」を開催し、地元生産者に農産物の販売の場を提供している。軽トラ市は「商売では、お客様の声を聞くことが何より大事。販売施設がない地元の生産者がお客様と接する機会を提供したい」との志田氏の思いで始めたものである。 第1回の軽トラ市は地元事業者10社強の出店の下、500人以上の買い物客が集まる盛況ぶりであり、地元客のみならず、宿泊する観光客からも好評であったという。 海楽荘の挑戦 代表取締役志田 豊繁 氏 株式会社海楽荘 ビジョン ● 大船渡の復興の拠点をつくり、地元の若い人の雇用創出に 貢献する ● 地域の繫栄なくして自社の繁栄なし ● 1000年続く企業を目指す 挑戦事例 温泉宿泊施設を復興の拠点に交流人口の拡大を目指す 観光業、大船渡市 大船渡温泉では2014年10月から毎月1回(第2日曜日)、地元の生産者に無償で駐車場を 76

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