被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント アカモクにはワカメやコンブに負けない美味しさ、栄養価があり、「必ず商品として売れる」と早い段階から確信していた髙橋氏は、アカモクという商品自体をスーパーや外食産業に売り込んでいたが、その販売実績は伸び悩んでいた。髙橋氏は、ある製菓会社の社長の講演で「人は知らないものは食べない」という言葉を聴いたのをきっかけに、商品自体を売り込むのではなく、アカモク自体を世間に認知させるPR活動を積極的に実施する戦略にシフトした。例えば、テレビや雑誌に取り上げてもらうように直接メディアへ売り込みを行ったり、山田町の飲食店と共にアカモクを使ったメニューを開発したりするなどの話題作りを仕掛けることで、認知度アップを図った。その結果、2005年に岩手県の地域産業資源に登録されたことを皮切りに、大手コンビニエ ンスストアとのコラ ボ商品が発売される など、世間に対する アカモクの認知度は 高くなり、販売も伸 びるようになった。 このような努力の結果黒字化を果たし軌道に乗りかけていた事業は、震災によりほぼ振り出しに戻った。宮古市にあるアカモクの加工工場は難を逃れたが、漁場である山田湾のカキの養殖イカダは壊滅したことから、アカモクは姿を消すなど甚大な被害を受けた。しかし、髙橋氏の「アカモクは必ず戻ってくる」という確信どおり、カキの養殖イカダが元に戻り、山田湾産の「岩手アカモク」は2015年春の収穫に向けて準備が始まった。 震災後は、アカモクの販売再開に向け、水産加工メーカーとしての活動だけではなく、アカモクを普及させるためのPR活動や飲食店とのアカモクを使ったメニューの開発、大学等の研究機関と連携したアカモクの研究など様々な活動に取り組んでいる。その中でも、「地域横断アカモクプロジェクト」として宮城県の同業者である㈱シーフーズあかまと共同で商品開発・ブランディング・販路開拓を行い、新たなアカモク市場を創出するという震災後に始めた活動が、水産業における新しい取り組みとして注目されている。 今後の課題と挑戦 【名 称】 岩手アカモク生産協同組合 【住 所】 岩手県宮古市高浜1-8-31 (宮古加工場) 【代表者】 代表理事 髙橋 清隆 【連 絡】 TEL:0193-65-1315/FAX:0193-65-1316 【 E-mail 】 kiyotakahashi@i-akamoku.jp 新加工工場の立ち上げ 髙橋氏が事業再興の先駆けと位置付けている取り組みが、2016年春頃を目処に地元である山田町に新加工工場を建設することである。初年度の目標は生産量100トン、売上3,000万円だが、その後、他の湾からの仕入も行いながら3年間で3億円まで売上規模の拡大を目指している。「既に震災前よりも引き合いは多く、不可能な数字ではない。あとはアカモクの収穫量と資源量をコントロールしていくだけ」と髙橋氏は語る。工場の建設資金や人材の確保といった課題はあるものの、補助 金と金融機関を 利用した資金調 達やこれまでに 培った人とのつ ながりで課題を 乗り越えていく。 山田湾に自生する天然のアカモクの資源量は多く見積もっても500トンであり、今後の生産量拡大や資源管理を考えると供給が追いつかなくなる可能性がある。この問題に早くから気付いていた髙橋氏は、文部科学省の「東北マリンサイエンス拠点形成事業」により、大学等の研究機関と連携してアカモクの養殖技術を確立した。この技術により海洋養殖だけでなく、陸地でも養殖が可能になる。さらに、養殖により生産量のコントロールだけではなく、栄養素の含有量もコントロール可能になることから、アカモクは高機能食品としてだけではなく、その成分を利用して医療産業にまで進出できる可能性を秘めていると髙橋氏は期待をかけている。 海洋及び陸地における養殖事業への着手 商品ではなく、 アカモク自体の認知度を向上させる 被災から再興へ向けて 75

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