被災地の元気企業 40
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挑戦事例 農林漁業、盛岡市 「おらほの」は東北の言葉で「私の」という意味である。Olahonoプロジェクト(以下、「Olahono」)は岩手県内のこだわり食材を扱った一口オーナー制の販売サイトであり、消費者は事前に契約してオーナーとなった、まさに「おらほの」海や畑で取れた生産物を旬の季節に楽しむことができる。 当事業を立ち上げた渡邉氏は豊かな自然に恵まれた岩手で高校時代までを過ごす。その後、東京で大学生活、大手コンサルタント会社での社会人生活を送っていたが、次第に農業の役割や自然環境の保護の重要性を強く認識していく。2009年、一念発起して岩手に戻り、実家が営む㈲秀吉の新規事業として、飲食店向けの食材の卸売り(「CHEF’S WANT」)、個人消費者向けの食材のネット販売(「S-FARM」)を開始した。当初よりOlahonoのようなオーナー制の販売システムを確立し、普及させたいと願ってはいたが、生産者は既存のやり方を変えることに抵抗があると考えられたため、まずは卸売りなどの取引で生産者との信頼関係を築き、渡邉氏の想いを徐々に広めていった。 「自然災害や野生動物の被害に影響を受ける生産者の収入の安定に貢献したい。その上で生産者には生産に注力し、より品質の高い、世の中に求められる商品作りを追求していって欲しい」と渡邉氏は想いを語る。震災による生産物の直接被害や風評被害に生産者が悩んでいた2011年、「今こそこの事業が必要な時」と渡邉氏は決心し、Olahonoはスタートした。 取り組み(事業内容) 産地や生産方法にもこだわった 多彩な品揃え Olahonoでは地元の間伐材を活用した筏で養殖した陸前高田産の牡蠣や合鴨農法の水田で育てた米、農薬の散布回数を抑えたリンゴなど、産地や生産方法などにもこだわった多彩な商品を取揃えている。こうした生産者の応援団であり、顧客でもあるオーナーの数はこれまで、のべ1000人を超えている。 「育てる」体験を含めた商品の提供 Olahonoでは収穫前の商品に関して契約を結ぶオーナー制を採用していることが特徴である。オーナーの不安を取り除き満足度を高める取り組みとして、生産者が生育状況を定期的にWEB上で報告するだけでなく、実際にオーナーが現場に出向いて生産体験ができる仕組みにより、オーナーと生産者に一体感が生まれている。 一方、生産者にとっては、Olahonoを通じて収穫・生産前に契約が行 われることにより収入 が安定し、生産に専念 できるだけでなく、生 産者との交流がよりよ い商品を生み出すこと へのモチベーションに もつながっている。 生産者の収入を安定させ 農業を持続可能な 産業にする ビジョン ● 生産者と消費者と共に豊かな食生活を実現する ● 持続的な一次産業の仕組みを創造する ● 食の安全を守るとともに、食に関わる自然環境問題に取り組む 営業企画部長 渡邉 里沙 氏 Olahonoプロジェクトの挑戦 有限会社秀吉 持続的な一次産業の仕組みを創造する挑戦 (写真右) りんご生産者とオーナー 72

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