被災地の元気企業 40
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地元が誇れる 伝統を素材にした 仕事作りに挑戦 福島県会津坂下町で会津木綿を使ったストール製作を行う㈱IIEの谷津氏は、市民活動やまちづくりを大学院で学んだ後、偶然地元に帰省していた時、震災が起きた。「自分にできることはないか?」谷津氏は震災当日から炊き出しのボランティアに奔走し、2011年4月以降は地元のNPO法人「まちづくり喜多方」でコミュニティカフェの運営に携わっていたが、そこで聞いた声が谷津氏の転機となる。 他地域から避難し、「何もすることがないのがつらい」という仮設住宅入居者の声。「地元のものにお洒落なものがない」という雑貨屋の女性の声。谷津氏はこの2つを同時に解決する方法として、「会津地域の伝統工芸である会津木綿でものづくり」×「仮設住宅での仕事づくり」をコンセプトに会津木綿ストールの製作を思いつき、IIEの創業を決意する。 しかし商品づくりのノウハウもお金もない谷津氏が事業を始めるには困難も多かった。まずは作り手探しが必要であったが、地元出身である谷津氏はそのネットワークを活かし、会津で仮設住宅への入居者にストールのフリンジ(=ふさ飾り)作りを依頼するとともに、地域の女性が働く裁縫工場に縫製作業を依頼するなど、地道に取り組みの輪を広げていった。「ストールの製作は難しい技術が要らず、誰でもできる作業だからこそ、受け入れられやすい。また、自分自身のやりたいこととも合致した」 「まずは物として評価された上で、作り手・使い手・売り手が同じ思いで繋がり、共存できる三方良しの仕組みを目指したい」地域の力を集約して一つずつ丁寧にものをつくりだすIIEの挑戦が始まったのである。 取り組み(事業内容) IIEの挑戦 代表取締役 谷津 拓郎 氏 株式会社IIE ビジョン ● 地域の力を集約して一つづつ丁寧にものをつくりだす ● 作り手・使い手・売り手の「三方良し」のものづくりの仕組み 挑戦事例 会津地域の伝統工芸を活用した新たな仕事作りへの挑戦 ものづくり産業、会津坂下町 会津木綿のストール製作 会津木綿は、「400年以上の歴史」「厚手で丈夫で保温性保湿性放熱性に優れる」「使えば使うほど味わいがでる」点が魅力である。このような素材の特性を活かし、仮設住宅の方々によるフリンジ作りと地域の女性による縫製で出来上がるストール等の商品は何十種類にも及ぶという。商品アイテム数を豊富に揃え、商品自体の魅力も向上させた結果、東京や関西、海外の店舗でも取り扱われるなど、注目を集めている。 新商品の開発~会津木綿のご祝儀袋 谷津氏はストール以外にも会津木綿を使った新商品の開発を積極的に行っている。2014年11月にリリースした会津木綿のご祝儀袋もその一つである。 きっかけは知り合いか らの「結婚式のご祝儀袋 を捨ててしまうのはもっ たいない。会津木綿で何 かいいものはできないか ?」という一言であった。 「会津木綿の包袋は、渡した後はハンカチとして使えるギフトになる。また、オリジナルのハート型の水引、書も福島県内の書道家に書いて頂いたオリジナルです」谷津氏は会津木綿のご祝儀袋に込めたこだわりを語る。 68

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