被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント 腕時計の生産拠点の海外移転などで受注が減少する中、大手精密機器メーカーからの受託製造をメインとしてきた林精器製造にとって、自社の技術力を生かした新規顧客開拓が長年の課題となっていた。さらに、震災の影響で一時操業停止を余儀なくされる間に既存の売上の一部が競合他社に奪われてしまったため、具体的な取り組みの必要性が高まっていた。 林氏は、自動車業界でも自分たちの技術が活かせるのではないかと考えていたが、自動車業界のサプライチェーンは強固であるため、商談につなげるきっかけすら掴めない状況であった。 活路を見出せないまま迎えた2013年10月、ひとつのきっかけが訪れる。前年より東北地方での現地調達を推し進めていたトヨタ自動車東日本㈱の現地調達推進センターとの出会いである。現地調達推進センターとは、その名の通りトヨタ自動車東日本が、現地での部品調達を推し進めるために設けた部門だ。 林精器製造が、現地調達推進センターにめっき表面処理技術を売り込む登録を行ったところ、数日後には第1次部品メーカーを紹介された。必要とする技術情報を十分咀嚼した上での紹介であったため、商談はスピーディーに進んだ。その後も取引は続き、林精器製造は自動車部品向けに新設備を導入し、2014年9月から量産化を開始している。 今後の課題と挑戦 【名 称】 林精器製造株式会社 【住 所】 福島県須賀川市森宿字向日向45番地 【代表者】 代表取締役 林 明博 【連 絡】 TEL:0248-75-3151/FAX:0248-73-3227 【 H P 】 http://www.hayashiseiki.co.jp 【E-mail】 general.sales@hayashiseiki.co.jp 外部との連携によるさらなる 新規顧客の開拓 自社の経営資源に限りがある中で、継続的に新規顧客を開拓するためには、外部との連携がさらに必要と林氏は感じている。有効なビジネスマッチングにおいては顧客のニーズを把握している仲介者の存在が不可欠であるとの思いから、広く情報とネットワークを有する商社との連携も有効な手段と考えている。 林氏も「ロボットにできる作業は極力ロボットにやらせたい」と考えており、林精器製造でも生産性の向上を図るため、産業用ロボットの活用に向けた開発を推進している。 その一方で、「美しい金属をつくる」ためには、必ず製造工程のどこかで人の手が必要であり、最後は人の手が製品を作り上げるという信念を林氏は持ち続けている。震災後に売上が減少した際に、雇用には手をつけず生産性向上と高付加価値の追求で危機を乗り切る決意を固めたのも、この思いがあったからだ。 効率性と「いいものをつくる」を同時に追求する林氏の挑戦はこれからも続いていく。 生産性の向上と高品質の追求 現代のものづくりの現場では製造工程の機械化が進んでおり、コンピューターによる自動制御でより人の感覚に近い機械が開発されている。 課題克服のポイント 大手自動車メーカーの調達部門に働きかけ、 自動車業界へ参入 産学官連携を通じた医療産業への展開 また、林精器製造が製造拠点を置く福島県は、医療福祉機器関連モノづくり技術の集積を目指した「うつくしま次世代医療産業集積プロジェクト事業」を推進している。林精器製造は自社の技術力と地の利を活かし、産学官連携による医療機器の製造・開発事業を推進している。 現在、ふくしま医療福祉機器開発事業費補助金事業等を活用した医療機器の開発案件が5件進行しており、このうち3件は大学などからの受託案件である。産学官連携を通じて、今後もさらなる事業拡大を目指している。 顧客ニーズと自社の技術の双方を把握した仲介者の存在が、販路拡大の鍵を握ると林氏は考えている。 67

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