被災地の元気企業 40
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挑戦事例 ものづくり産業、須賀川市 取り組み(事業内容) ウォッチケースの製造で培った研磨技術 林精器製造にとって、ウォッチケースの製造は、大手精密機器メーカーからの生産受託を通じて業容を拡大してきた基幹事業である。 高級腕時計には、精度のみならず高い質感と仕上げの美しさが求められ、そのコア技術となるのが独自の技術である「ザラツ研磨」(注)である。さらに、上流 (注)「ザラツ研磨」・・・回転する金属の円盤に研磨紙を貼り付け、そこにケースを押し当てて表面を磨き上げる技術。平面のゆがみをなくし、平面と斜面のつなぎ目のエッジをしっかりと際立たせることができるため、ウォッチケースのデザイン性・高級感を引き立たせる。 ものづくりチーム 林精器製造は、人の手を通じたものづくりにこだわりを持っており、「ザラツ研磨」に代表される独自技術の伝承に力を入れている。 美しい金属をつくり 続ける 林精器製造の挑戦 長年培った高い技術を武器に新たな事業に挑戦 代表取締役 林 明博 氏 林精器製造株式会社 ビジョン ● いいものをつくる 工程にあたるプレス工程でも冷間鍛造技術という製造法を活用し、その技術に磨きをかけている。 ザラツ研磨が施されたウォッチケース 1921年創業の林精器製造㈱は、精密金属加工、めっき表面処理、各種機器装置の製造の3事業を基盤とするメーカーである。そのコア技術は、祖業であるウォッチケースの製造を通じて培った三次元の曲面を歪みなく鏡面加工する「研磨」であり、この技術を評価され第四回ものづくり日本大賞“特別賞”を受賞するなど林精器製造の競争力の源泉となっている。 震災による操業停止で仕事が他社へ流出したが、東日本大震災から間もない4月、林氏は社員集会の場で、「いいものをつくる」という新たな社是を全社員に伝えた。本社工場が甚大な被害を受け復旧への目処が立たず、顧客喪失の危機にある中、あえてものづくりの原点に立ち戻ることとした。 その結果、林精器製造の技術力を知る顧客の多くは、事業再開後、林精器製造との取引を復活させるに至っている。 取引を復活してくれた顧客への感謝の気持ちとともに、林氏の「いいものをつくる」という想いは、揺るぎないものとなった。 若手3人に対し1人のベテランを組ませる「ものづくりチーム」を設置し、長年培ってきた「研磨」の技能や技術を次世代に伝承する人材育成を行っている。当初はオフの時間に技術の伝承を試みたが、講師の説明中心となるためリアリティが無かった。現在、「ものづくりチーム」は製造職場から仕事を請け負うことで実際の製品を使い責任感をもたせて技術の伝達を試みており、以前に比べて各段に効果が出ている。 66

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