被災地の元気企業 40
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行政との連携が商品の性能向上と 安全性のアピールにつながる 産学連携で開発された除染機であったが、当初は除染機の効果と安全性についての確証がなかったことから除染事業者に受け入れられなかった。このため同社が福島県除染対策課に相談し、同課から県内で先進的に除染作業を推進していた伊達市放射線対策課の紹介を受ける。 その結果、伊達市において除染作業に利用され、改良を重ねることで信頼性を高めることに成功した。また、福島県主催の会合において専門家から性能向上についての助言・指導を受ける機会にも恵まれ、これら行政からの支援・連携が性能の向上と安全性の面で大きなアピールとなった。 公的機関の実証事業を活用し 市場の信頼を勝ち取る 今後の課題と挑戦 【名 称】 株式会社アイワコーポ 【住 所】 福島県郡山市小原田4丁目11番13号 【代表者】 代表取締役 鈴木 晃 【連 絡】 TEL:024-944-1509/FAX:024-944-8228 【 H P 】 http://www.aiwacorp.co.jp/sitetop/sitetop.html 【 E-mail 】 infoweb@aiwacorp.co.jp 市場ニーズを意識した 商品開発の必要性を認識 アイワコーポが開発した除染機は技術的に高い評価を得たが、売上は思うように伸ばすことができていない。同商品はコンパクトであるが故に、作業時間当たりの除染範囲が従来の除染機に比べると狭いという課題があり、この点が低コストで広範囲の除染活動を行いたいという除染事業者のニーズに合致しなかったためである。性能が良いだけでは商品は売れない。市場のニーズに合致した商品開発を行う必要があると鈴木氏は再認識した。 除染機開発で培った技術 を除塩事業に活かす しかも、除染機事業から得たものはそれだけではなかった。高性能かつコンパクトな除染機を製造するという技術が他の用途に展開されようとしているのである。除染機開発は県の支援事業であり、また東北経済連合会と連携していたことから、数多くのメディアに取り上げられていた。その結果、循環回収型放射能除染機は国土交通省の技術事務所の目に留まることとなる。同省では、津波で冠水した地域の脱塩作業や、橋梁部の塩化ナトリウム(凍結防止剤)除去作業などのインフラ整備作業のために小回りの利く洗浄器を求めていた。震災がきっかけで誕生した同商品は除染活動に留まらず、インフラの長寿命化へのニーズを背景とした除塩活動という新たな市場での活躍が期待されている。 このように常にいくつかの事業を立ち上げ、同時並行的に推進・展開することで市場ニーズを探り、軌道に乗った事業を本格稼動させるという経営手法を掲げ、アイワコーポはこれからも挑戦を続けていく。 除染機の普及は道半ばであるが、震災直後に除染事業に着手したことで企業イメージや社員のモチベーションの向上につながり、鈴木氏が目指した社内の活力の引き上げに寄与したといえる。 これらの取り組みの結果、アイワコーポの「循環回収型放射能除染機による一般家屋の除染技術」は、平成24年度の福島県除染技術実証事業に採択されることとなった。実証の結果、様々な対象物に対して広い除染効果があり、狭小な場所に対してより効果的な技術であることが示され、また汚染水の回収性能についても高い評価を受けた。このように公的機関の実証事業により評価を受けることが、市場の信頼を勝ち得る上で重要な要因であったという。 課題克服のポイント 65

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