被災地の元気企業 40
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挑戦事例 ものづくり産業、郡山市 この地を守るために 除染機開発への挑戦を決意 ㈱アイワコーポは福島県郡山市に本社を置く、産業資材・産業機器を企画、生産、販売する事業者である。 福島県ではいまだ放射性物質への不安に苛まれながら生活を送る市民が数多く存在する。震災直後は、鈴木社長を含め従業員の中にも安全に対する不安が広がり、福島県外に避難することを検討していた従業員もいた。その一方で顧客への納期を守るためには地元に残り生産を続けることが必要だった。悩んだ鈴木氏は、社員に何とか地元にとどまってもらおうと、「震災に立ち向かうことで地域・社員を守る」と決心。福島県民の多くが感じている放射性物質への不安を解消するため、アイワコーポにとって未知の分野である、除染機開発への挑戦を決意する。 震災直後の混乱した状況下において、震災を逆手に取り、震災があったからこそできるビジネスに挑戦したことが会社の活力になり、社員の士気を高めるとともに、自社にとっての新たな市場を見出すことに繋がった。鈴木氏は、「震災時のような究極的な状況下では、震災に立ち向かうのだというチャレンジ精神が本当に重要だった。地場産業として地域の需要に応じた開発をしようと考えた」と振り返る。 取り組み(事業内容) ビジョン ● 「起こせ行動」挑戦なくして成功なし ● 困難な仕事ほど価値がある ● 地場産業として「多角化」戦略をとる 循環回収型除染機の開発 アイワコーポが開発した循環回収型除染機は、以下のような特徴がある。 ①軽量・コンパクトであり重機を搬入できない箇所でも使用できる ②形状の異なる複数のノズルを交換使用することで壁面・屋根部など多様な箇所に適用できる ③対象物を除染しながら排水を回収・ろ過循環し高圧水流として再噴射するシステムを搭載している これらの特徴により、近隣への飛散や作業員への被ばくを防ぎ、使用水量を抑えることを実現した。 産学連携によるイノベーション創出 この除染機完成の背景には、従来より取り扱っていた洗浄器の開発ノウハウをベースとしつつ、産学が連携した取り組みがあった。商品の特徴である循環型機構は東北文化学園大学の野崎淳夫教授によるアイデアだ。機構の組立は有光工業㈱(大阪市)、除染効果の測定・分析・評価は暮らしの科学研究所㈱(郡山市)が担当する。このスキームは、鈴木氏が開発過程の相談を東経連ビジネスセンターに持ち込み、その解決策として各関係者がマッチングされる形で構築された。またこの事業は、東経連ビジネスセンターの新事業開発・アライアンス助成 代表取締役 鈴木 晃 氏 アイワコーポの挑戦 株式会社アイワコーポ 除染機開発事業への挑戦を契機に新市場へ乗り出す 事業に採択され、開発費用の支援を受けたことが資金面での後押しとなった。 64

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