被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント WATALISは、2012年に任意団体として発足、2013年4月に一般社団法人化し現在に至る。創業時においてはさまざまな課題に直面するが、WATALISはどのように課題を克服したのだろうか。「WATALISは多くの方々の協力に支えられてこそ、今がある」と代表理事の引地氏は語るが、その内容は以下の三つである。 第一に、資金調達面において、創業時の投資資金から運転資金に至るまで、宮城県など多数の機関(注)から補助金や助成金という形で協力を受けている。「資金援助の制度は世の中に多数存在するが、制度を知る機会が不足していると感じる。周囲の方々に制度の存在を教示いただくことが多々あった。自らの想いを発信し、多くの人と繋がりを持つことが大切であると実感した」と引地氏は語る。第二に、材料仕入面において、商品の原材料となる着物地は全国各地の方々から提供を受けたものである。提供者には、手作りの和装雑貨をお礼として贈呈しており、「感謝の心を形にして贈る」という「FUGURO」のストーリーを自ら再現している。第三に、販売活動面において、大手百貨店での展示販売や、海外有名ブランドとの協力体制を 震災以降、被災者支援を目的としたものづくりは県内のさまざまな仮設住宅で行われていたが、商品の質や販路に窮するなどの問題により事業化に至った例は数少ない。その中で、WATALISが事業化に成功したのには二つの大きな要因がある。第一に、ふぐろのストーリーがもつ価値はそのままに、いまの時代に受け入れられるようデザインを一新し、「FUGURO」として新たな価値を付加したことである。第二に、作り手である女性たちが縫製技術研修を通じて学び、成長する機会を提供したこと、また商品の検収基準を厳格にしたことにより、商品の品質に徹底的にこだわったことである。消費者にとって真に価値あるものを提供したのである。 今後の課題と挑戦 補助金や助成金に頼ることなく、 事業として継続的に自走する WATALISが克服すべき課題として、引地氏は「補助金や助成金に頼らずに事業として継続的に自走できる体制を構築すること」を挙げ、そのためには①知名度の向上②ブランディング③新規商品の開発④生産協力企業との連携が必要と語る。具体的には、①著名人とのコラボ商品の製作や企業との連携強化をより積極的に行う ②現状は復興商品としての認識が世間では強い が、それ以上の付加価値を持つ商品として、デザインや品質の優位性を打ち出したブランディ ングを行う ③商品種類の拡充のみならず、和装雑貨の製作キットのような、つくる過程を楽しむことができる商品など商品のラインアップを拡充する ④今後想定される大規模ロット注文に対応できるよう、生産協力企業との連携を構築するなどで対応することを予定している。また、これらの課題に正面から取り組むためにも、法人格を株式会社化する構想がある。法人の存在目的を形式的にも明確にし、事業を継続する強い意思をアピールする。 【名 称】 一般社団法人WATALIS 【住 所】 宮城県亘理郡亘理町字中町22 【代表者】 代表理事 引地 恵 【連 絡】 TEL/FAX:0223-35-7341 【 H P 】 http://watalis.com/ 【 E-mail 】 info@watalis.jp (注)2012年度以降にWATALISが活用した助成・補助協力機関は以下のとおりである(順不同)。 宮城県、経済産業省、国土交通省、内閣府、(独法) 福祉医療機構、(公財) 地域創造基金さなぶり、(公財) 公益法人協会、 (公財) 共生地域創造財団、日蓮宗宗務院伝道部、生活協同組合連合会グリーンコープ連合、英国商工会議所(BCCJ) ビジョンや想いを伝えることで、 多様な支援の活用可能性が広がる 想いだけではない、 真に価値あるものの提供 構築している。 なぜ、創業から間もなく実績の少ないWATALISに対して、これほど多くの方からの支援が集まったのであろうか。これは、WATALISおよび引地氏の「亘理の文化と技術、感謝の心をつなぐことを未来へ伝承したい」「雇用を創出し地域を活性化させたい」というビジョンや、ものづくりに賭ける熱い想いが、支援者に伝わり理解され共感されたことによる側面が大きい。 ~WATALISの和装雑貨。その種類は多岐にわたる~ 63

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