被災地の元気企業 40
64/126

挑戦事例 ものづくり産業、亘理町 東日本大震災により甚大な被害を受けた宮城県亘理町において、手仕事によるものづくりを通じて、地域の文化や技術を伝承し、雇用と地域住民による新たなコミュニティを生み出すべく取り組みをしている団体がある。それが(一社) WATALISだ。 団体名であるWATALISとは、WATALISのある「亘理」町と「お守り」という意味のTALISMANを組み合せた造語である。亘理から、多くの方々へ感謝の心をお守りのように大切に手渡したいという思いが込められており、感謝の心を届けるツールがWATALISの主力商品である「FUGURO(ふぐろ)」である。 かつて、養蚕業が盛んだった亘理町には古くから「あずき3粒包める布は捨てるな」といわれるほど布を大切にする文化と、縫製の技術がいまなお根付いている。また、ふくろ(亘理では「ふぐろ」と呼ばれていた)の中にお米を入れ感謝の気持ちを手渡すという「FUGURO」のストーリーに象徴される感謝の心をかたちにしてお返しするという返礼文化が存在する。WATALISは、地域に伝わる縫製技術や返礼文化といった良き慣習を大切 にし、そのストーリーを 人から人へ次世代に受け 継ぎながら、地域女性の 雇用機会の創出と、震災 で崩壊した地域コミュニ ティの再構築を目的とし て事業に取り組んでいる。 取り組み(事業内容) 着物地を活用した リメイク和装雑貨の製造・販売 WATALISでは、全国から寄せられた着物地をリメイクし「FUGURO」などの和装雑貨を製造し販売している。Web販売や展示販売による一般消費者向け販売のほか、最近ではスイスの高級腕時計メーカーの限定モデルパッケージに採用されたり、アメリカのアパレルブランドとコラボ商品を製作したりするなど、取引の幅は広がりをみせている。 また、資源の有効活用は重要な社会課題のひとつであるが、衣料品のリサイクル率が20%以下といわれる日本において、箪笥に眠る着物地を活用し、デザインと縫製力で価値を高めて再び市場へと送り出す「アップサイクル」の取り組みは、社会課題の解決という観点からも注目を集めている。 地域の女性の就労機会の創出 WATALISにおいてリメイク和装雑貨の縫製を行うのは地域の女性たちだ。家事や育児および家族の介護などにより就労に制約がありながらも、自らの技術を活かしてチャレンジしたいと考える女性は多数存在する。WATALISはそのような女性にとって、自ら時間を選択して働ける機会を創出している。 さらに、女性たちは、各家庭で空き時間を用いて縫製を行い、できあがった商品を店舗兼工房に定期的に持ち寄る。また、毎週月曜に開催している定例会では、外部講師を招いた縫製技術研修や情報交換を行っている。このように、WATALISの事業の根幹である縫製技術のレベルアップを図るとともに、地域の文化や技術の伝承の場、交流の場が創造されることで、地域に新たなコミュニティが構築されている。 左:FUGURO<吉祥文様柄>小 右:FUGURO<吉祥文様柄>大 亘理の文化と技術を伝承し 感謝の心を伝える WATALISの挑戦 地元亘理の伝統を活かした新事業の立ち上げに挑戦 代表理事 引地 恵 氏 一般社団法人WATALIS ビジョン ● 地域の文化や技術、感謝の心を、人から人へ、世界へ、そして未来へつなぐ ● 持続可能なビジネスへと成長させることで、地域に雇用を創出し、地域経済の活性化を図る 62

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です