被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント madehni(までーに)ブランドの商品開発は、「豊富な資源があるものの地元に利益は落ちず、後継者不足に悩む地域の課題を解決するためには、地域間異業種連携が必要」と震災前から考えていた河野氏を中心に、震災からの復興だけではなく、さらなる成長を目指す4社が集まりスタートした。しかし、各社とも、工場を失い、震災からの再建を進めつつ商品開発を続けていくことは、資金的にも相当な負担があった。 こうした中、みらい食の研究所は、2014年3月に「復興応援 キリン絆プロジェクト」による支援を受けた。「非常にありがたかったです」と河野氏は話す一方で、「支援が得られなくても商品開発を続けていたと思います」と続ける。地域の活性化および雇用創出のためには、地元企業が連携して商品開発を続け、ヒトへの投資を続けることが必須であるという信念があるからだ。その確固たる信念こそがみらい食の研究所が支援を受けることが できた理由の一つ である。 今後の課題と挑戦 【名 称】 みらい食の研究所 【住 所】 宮城県気仙沼市本郷6-11 (株式会社斉吉商店内) 【代表者】 代表 河野 通洋 【連 絡】 TEL: 0226-22-0669 【 H P 】 http://madehni.jp/ 【 E-mail 】 info@madehni.jp 地域の魅力を結集した高付加価値化への 努力で地域経済を活性化 みらい食の研究所自体の歴史はまだ浅く、madehni(までーに)プロジェクトも開始したばかりで、安定的な売上と利益が獲得できるか否かはいまだ未知数である。その成功のカギとなるのは、震災以前から継続している「地域への思い」だ。 「三陸をはじめ地域には貴重で魅力的な資源がたくさんある」と河野氏はいう。 その地域ごとの魅力・技術を結集させ、6次産業化(1次産業×2次産業×3次産業)して付加価値を高める必要があると河野氏は考えている。みらい食の研究所では、パッケージデザインや、広告・宣伝方法なども協議し、「地域の食」として三陸の価値・魅力を直接消費者に届ける体制づくりも行っている。 一言に連携といっても、簡単ではない。意見が一致せず衝突することもある。「いつも衝突していますよ」と河野氏。ただし、その根底には、ビジネスライクな関係でも単なる仲良しクラブでもなく、お互いの強みだけでなく弱みも全てさらけ出すことのできる信頼関係が存在している。 自分が時間と手間をかけた開発試作品について、「病院食みたいだけど本当に売れるの?」などの意見が出ることも珍しくない。弱みを見せているから、厳しい意見は自分に返ってくる。それでも恐れず必要な意見を伝え、自身の成長につなげる。お互いを磨きあっているからこそ連携が継続できている。 商品開発は全てが実を結ぶとは限らない。だからこそ、企業として成果を獲得するため、真剣だ。開発する商品を磨くため議論は深夜に及ぶこともあるという。 複数の事業で、また地域で連携し、継続して商品開発力を高め、その魅力を消費者に直接伝えることができれば、地域活性化につながる。 地域間異業種連携による商品開発 開発会議での真剣な磨き合いが連携を維持 そのモデルケースにみらい食の研究所はなるだろう。 (こうの みちひろ) スープ開発のための話し合い 気仙沼完熟牡蠣のポタージュ(写真手前) メカジキの地中海風スープ 海老団子とかぶのすり流しスープ 61

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