被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント 「造船会社4社は隣接して営業しているが、震災以前は道ですれ違っても会釈程度。激しいライバル関係にこそあったわけではないが、協力することなど考えられなかった。それが震災によって全て変わった」と組合の理事長でもある木戸浦氏は語る。「皆、建造中または修繕中であったお客さんの船と会社が流されるのを目の当たりにした。震災後は地震により地盤が沈下し、船尾が海に浸かった状況での作業を強いられた。安全性が脅かされ、経営も圧迫され、このままでは廃業に追い込まれると感じた」 造船各社は皆同じ状況であり、気仙沼の造船業の灯火が消えかねない状況であったことから、造船会社やその関連事業者が自然に集まり、造船業の集約と関連事業者を含めた共同での事業 更に国および市の後押しが、造船団地構想の実現を加速させている。懸案であった造船所の建設資金は、国土交通省の造船業等復興支援基金を申請することを予定しており、実現への道筋が見えてきた。また、建設予定地は、気仙沼市が気仙沼造船施設整備高度化事業として、土地の造成をすることになっている。 「震災を境に、我々を取り巻く環境は全く変わった。しかし、今こうして各方面の多くの皆さんの応援を受け、造船事業者全員で取り組む新しい造船団地という夢を持ち、希望を持つことができた。構想実現後は造船事業を通じてこ れまで以上に気仙沼、ひいては日本の水産業に 貢献していきたい」と木戸浦氏は熱く語る。 今後の課題と挑戦 【名 称】 気仙沼造船団地協同組合 【住 所】 宮城県気仙沼市港町506番地11号 石川電装株式会社内 2F 【代表者】 理事長 木戸浦 健歓 (きどうら たけよし) 【連 絡】 TEL:0226-23-7482 【 E-mail 】 kumiai.miura@gmail.com 国および市、また民間の金融機関等からも多くの応援を受け、課題を解決しながら一歩一歩前進を続けている造船団地組合。まだまだ建設に向けて解決すべきことは数多いが、設立後にも難題が待ち受けている。例えば、漁船隻数の減少という避けられない現実にどう対応していくか。「シップリフト方式の利点を最大限に生かし、これまでの設備ではできなかった海洋インフラや海洋構造物等への取り組みを現実化していく。また、従来の鉄鋼材料以外の船、例えばアルミやFRPなどの材質の造船、修繕にも積極的に取り組んでいきたい。これらを実現し、建造できる船の種類を増やすことで、世界の船舶需要を取り込み、日本を代表する造船所になりたい」木戸浦氏は、造船団地設立後の未来を見据え、行動を開始している。その眼差しの先には新しい造船所の姿と、活気ある気仙沼市が映っている。 造船のほか、海洋インフラ・ 海洋構造物の分野も取り組む 運営という構想が練られていった。こうして気仙沼造船業の生き残りをかけた造船団地組合が設立されることとなる。 同業者が一致団結し、共同での 事業運営による業務効率化を目指す 国、市の後押しで建設資金の調達、 土地の造成を進める 57

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