被災地の元気企業 40
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挑戦事例 ものづくり産業、気仙沼市 気仙沼は、世界三大漁場のひとつである三陸沖沿岸に位置し、周囲を陸地に囲まれた天然の良港であり、水揚げのほか補給、船舶修繕など漁港としての機能が全てそろう国内屈指の拠点漁港である。漁船修繕・建造の歴史も古く、創業100年を越す造船業者も存在し、気仙沼の造船技術や修繕技術は広く業界に知れ渡っている。 ただ、近年の日本人の魚食率の低下等を背景に、漁船の数は20年前と比べ約7割まで落ち込んでいるといわれるなど、国内の漁船造船業を取り巻く環境は厳しい。このような中、気仙沼で創業以来80年、漁船の修繕・建造業を営んでいる木戸浦造船㈱社長の木戸浦氏は、気仙沼の造船業を守り、また斜陽産業からの脱却を図り世界に打って出るべく造船団地構想の実現に取り組んでいる。「震災は気仙沼の造船業界に大きな被害を与え、現在も厳しい経営状況が続いている。しかし、これを逆にチャンスと捉え、気仙沼の造船業界を再編し、気仙沼の造船業者全員で、世界と戦えるような造船所を再建したい」木戸浦氏はこう語る。 木戸浦氏は、気仙沼の造船業界復興の鍵として、効率性と安全性が格段に増すシップリフト方式による造船所の建設を決断した。シップリフト方式の造船所は、造船業者にとっては垂涎の施設であるが、投資額が高額であることから日本ではこれまでわずかに2つの造船所でしか導入されていない。「まずはシップリフトを備えた造船団地の建設を実現したい。気仙沼の造船業者ならびに造船関連業者の復興はこの一点にかかっている」木戸浦氏は自らの挑戦を熱く語る。 取り組み(事業内容) 気仙沼造船団地協同組合の設立 気仙沼造船団地協同組合は、気仙沼市の造船業者および造船関連事業者計17社により2013年4月に設立された。気仙沼市朝日町にシップリフト方式を採用する造船団地の建設を目指している。ここには組合員である造船業者、造船関連事業者が事務所を構える予定で、大幅な作業、事務の効率化が期待される。現在、国土交通省、 気仙沼市などの後押しを受け、組合員が団結して日夜構想の実現に向けて奔走している。 シップリフト方式は、陸揚げや進水時の船の上下架を巻き上げ式のプラットフォームに乗せて行うもので、船の横転リスクが軽減されるほか、従来の滑り台式の上架方式と比較し上下架の時間が格段に短縮されるという特徴があり、海洋構造物等の製作も可能となる。 なお、造船団地組合の理事を務め、新造船所の事業主体となる木戸浦造船㈱、㈱吉田造船鉄工所、㈱小鯖造船鉄工所、㈱澤田造船所は将来的に経営統合し「みらい造船(仮称)」となり、造船所建設費に関しては国の補助金を受ける予定である。2015年3月に新会社を設立、仕入機能の統合を行い、2017年3月の合併に向け、経営効率化を図りつつ経営体制を整備し、新会社にスムーズに移行することを予定している。 理事長 木戸浦 健歓 氏 ● 気仙沼造船業の集約と成長 ● 漁船漁業と水産業を支え、地域発展へ貢献 ● 日本の造船技術で世界へ オール気仙沼で世界と 戦える造船所を作りたい 気仙沼造船団地協同組合の挑戦 業界再編により競争力強化を目指す気仙沼の造船事業 気仙沼造船団地協同組合 ビジョン 56

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