被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント 今後の課題と挑戦 二人のキャリアを活かし、 優れた技術を世に送り出す マテリアル・コンセプトは、震災後、キャリアを活かして東北に貢献しようと考えた小池社長と小池教授の二人のノウハウが結集して誕生した会社である。 銅をはじめとするマテリアル研究のスペシャリストであり、開発した銅合金が世界の主要半導体メーカーに採用された実績がある小池教授が着目したのは、それまでブレークスルーが切望されていた、太陽電池の集電電極の銅ペーストの開発だった。震災から1ヵ月後の2011年4月、東北大学小池研究室が銅ペーストの開発を開始。世界の主要メーカーや研究機関が長年研究を続けてきた技術を新たに開発し、ブレークスルーを実現。2012年5月には文部科学省新産業創出事業(START)に採択され、事業化に向けた動きが本格化した。 しかし、優れた技術を世に送り出す枠組みが必要だ。小池社長は、科学技術振興機構(JST)における科学技術コーディネーターとしての勤務経験や、東京大学発ベンチャー企業の取締役として企業間連携や経営企画・営業を務めた~ゃ キャリアを活かして、まず、中小企業基盤整備機構が東北大学青葉山キャンパス内で運営を行う大学連携型起業家育成施設T-Biz(東北大学連携ビジネスインキュベータ)にて、マテリアル・コンセプトを設立。技術面で、東北大学と共同研究しやすい体制とした。また資金面では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からイノベーション実用化ベンチャー支援事業の助成金を獲得。さらに、2014年2月には㈱産業革新機構および大和企業投資㈱からの出資を受け入れ、今後の事業拡大に向けた資金面・経営面のサポートを得た。人材面では、社内にアドバイザリーボードを設置、大手電機メーカーOBなどの有識者からアドバイスを受けている。 世界に羽ばたくベンチャーとなる 東北の技術を活かした起業の 成功事例となる 「世界に求められている技術を世界に伝えたい」 小池社長が目指すのは拡大を続ける世界の太陽電池市場への展開だ。会社は今後、銅ペーストの提供先を国内外問わず選定し、量産体制に入る見込みである。2015年度に導入を予定する生産設備が完成すれば、世界シェアの30%程度に相当する32トン/月の生産が可能となる。事業拡大に必要な資金調達の手段として株式上場(IPO)も視野に入れる一方で、地域に貢献するという会社設立以来の理念も大切にする。「ニーズを追って世界に出る。しかし軸足は仙台にしっかりと置いて、その利益を地域に還元できれば」と小池社長は語る。 「東北には優れた技術やモノが潤沢にあり、それを支える大学等の研究機関も充実しています。優れた技術を世に送り出す手段の一つが起業です。マテリアル・コンセプトが成功事例となることで、産学官が連携し、東北においてベンチャー企業が次々に誕生する好循環のエコシステムが生まれることが夢です」と小池社長は語る。 小池社長の熱い想いは会社ロゴにも表れる。 【名 称】株式会社マテリアル・コンセプト 【住 所】宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-40 東北大学T-Biz408 【代表者】 代表取締役 小池 美穂 【連 絡】 TEL:022-796-2590 突き出る「M」がイノベーション、それを情熱を表す赤い「C」が支える。「10年後、東北大学のある青葉山に『シリコンバレー』ならぬ『アオバヒル』がつくられたら素晴らしいですね」と小池社長は、東北経済の未来を語る。 出典:EPIA「Global Market Outlook for Photovoltaics 2014-2018」 0501001502002503003504002012201320142015201620172018累積導入量(GW)世界の太陽光発電の導入量推移予測実績49

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