被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント 大山健太郎氏から学んだ 「生活者目線」という経営ノウハウ 針生氏は、震災後、新たなビジネスモデルを模索する中、2013年1月の東北ニュービジネス大賞の表彰式で、後の強力なビジネスパートナーとなる大山氏と運命的な出会いを果たす。針生氏にとってまさしく天の時、表彰式の2日後、すかさず大山氏に直談判してから会社設立までの2ヶ月間、徹底的にビジネスモデルを検討した。ビジネスを創り上げるプロである大山氏やアイリスオーヤマの各分野の専門家との議論を通じてビジネスモデルをブラッシュアップし、市場性、優位性、成長性などもうかる仕組みを創り上げるためである。 新鮮小袋パックなどの 商品も、「生活者が何を 求めているか」という大 山氏の生活者目線のもの づくりの発想が活かされ ている。 新たな農業のサプライチェーン化により 高付加価値化を図る 場で旨味を保って精米し、アイリスオーヤマの流通プラットフォームに乗せて全国に販売している。このような垂直統合は、これまでにない一貫・大規模製販モデルであり、従来生じていたコメの中間流通コストをカットしつつ、独自の製法によるおいしい「ごはん」を生活者に直接お届けすることが可能となった。 また、舞台アグリイノベーションが展開する大規模な精米事業においては、コメの安定仕入は欠かせない。針生氏は、2013年11月に宮城、岩手、秋田の農業生産法人と連携して、「㈱東日本コメ産業生産者連合会」を立ち上げた。コメ農家をとりまとめ、資材・農機具の共同利用や農地集約支援などによる生産の効率化を図り、コメ農家が安定して生産・ 供給できる体制も構築した。 針生氏は、生産から販売ま でのサプライチェーンを農 業生産法人や流通などの異 業種と連携することで、こ れまでにない農業の付加価 値がつくことを実感したと いう。 針生氏は、農協などの市場流通に頼らない6次産業化を進めてきたが、農業者だけのビジネスでは発想に広がりがなく、ビジネス展開に限界があることを感じていた。そこで、プロダクトアウトからマーケットイン、さらにはユーザーインの目線で、コメの生産、仕入、精米、流通、販売に至るサプライチェーンを見直した。具体的には、全量買取を保証している契約農家やグループ会社の舞台ファームからコメを安定的に仕入れ、亘理工~ 今後の課題と挑戦 次世代農業経営者の育成 【代表者】 代表取締役社長 針生 信夫 【連 絡】 TEL:0223-32-8651/FAX:0223-32-0913 【 H P 】 http://www.butai-agri-innovation.co.jp/ 日本の農業従事者人口は減少し、高齢化が進んでいる。その一方で、若手の農業後継者やこれから農業を始める若者も増えてきている。針生氏は、「農家には経営ができる人が少ない、今後見込まれる国際競争に打ち勝つには、経営ができる農業従事者が求められる」と断言する。今後、自らの経験をもとに、次世代の農業を担う若手農業経営者や農業ベンチャー企業の育成に力を入れていくという。 日本の農業を世界に誇るビジネス産業へ の売上目標を掲げ販売の拡大を進めているが、おいしい「ごはん」のブランドを浸透させるにはまだ時間がかかる。同社の販売拡大の先には海外市場も見据えている。鮮度を保ったおいしいコメは、国内だけではなく海外でも需要があると考えている。 針生氏は、若手農業経営者の育成とコメの新たな価値で需要を創造するビジネスモデルの変革から始めて、日本の農業を世界に誇るビジネス産業へ変えていくという。 「日本はロボットの研究やICT(情報通信技術)の農業への活用が進んでいます。人間に代わってロボットが農業をおこなう時代がやって来るかも知れませんね」日本の農業の未来を展望する針生氏の動きに今後も目が離せない。 舞台アグリイノベーションでは初年度200億円 【名 称】 舞台アグリイノベーション株式会社 【住 所】 宮城県仙台市青葉区中央2-1-7 アイリス青葉ビル8階 47

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