被災地の元気企業 40
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取り組み(事業内容) 挑戦事例 水産加工・食品製造業、仙台市 農業のプロと経営のプロが連携して農業ビジネスの変革に挑む 世界に通用する 農業ビジネスモデルを創る 舞台アグリイノベーション株式会社 代表取締役社長 針生 信夫 氏 「おいしいおかずは満足感をもたらし、おいしい『ごはん』は幸福感をもたらす」 日本の食卓を支えるお米に対する針生氏の揺るぎない信念だ。針生氏は、コメと野菜を生産・加工・販売する東北有数の農業生産法人である㈱舞台ファームの社長を務め、代々続く地元農家の15代目でもある。日本農業の変革をリードする農業経営者の一人だ。 日本の農業は、農業従事者の減少、食料自給率の低下、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)など厳しい状況に直面している。「従来にない全く新しい考え方やスキームを用いた新しい農業の仕組みがなければ日本の農業は成長できない」と針生氏は言う。「農業改革をおこし、日本の農業を世界に誇るビジネスに変える」と意気込む針生氏を力強く後押しした人物が一人いた。アイリスオーヤマ㈱の大山健太郎社長だ。震災後二人は、「消費者においしい『ごはん』を召し上がってもらい、コメの消費を拡大することで、東北のコメ農家を支援したい」との思いが合致し、コメの精米事業に着手することを決めた。それが、2013年4月に舞台ファームとアイリスオーヤマの共同出資で設立された舞台アグリイノベーション㈱だ。 舞台ファームは農業を熟知しコメ・野菜の生産販売のノウハウが強みであり、アイリスオーヤマは全国への販路そして新規ビジネスを立ち上げるノウハウを強みとして持つ。お互いの強みを掛け合わせることで、農家にとっても企業にとっても“適正利益を得られる安定事業”となるビジネスモデルの確立を目指している。 ビジョン ● おいしい「ごはん」の価値を見直す豊かな食文化を築く ● 日本のお米の消費を増やし、お米農家を支援する新たなモデルとなる ● 日本の農業を世界に誇るビジネス産業にする 国内最大級の精米工場を新設 舞台アグリイノベーションの事業拠点となるのは、宮城県亘理町に2014年7月に完成した精米工場である。経済産業省の「津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金」とアイリスオーヤマの金融 支援を受け、4万2千トン のコメを備蓄できる低温 倉庫を備え、年間10万ト ンと国内最大級の精米能 力を有している。 法」を採用しているのが特徴だ。この製法こそが、おいしい「ごはん」づくりのこだわりである。 また、ここで精米されるコメは食べる人の利便性にもこだわっている。「新鮮小袋パック」と名付けられた包装は、高気密性の小袋パックに脱酸素剤を封入し、鮮度の良い状態で食べきれるよう3合単位の包装にしており、家庭まで精米したてのおいしさを届ける工夫をおこなっている。 おいしさへのこだわり コメの食味を落とす原因のひとつに保管から精米工程で発生する「温度変化」があるという。これを克服するため、亘理工場では湿度65%、温度15度以下の低温を保ち、低温保管、低温精米、低温包装をおこなう「トータルコールド製 コメの全量買取保証制度 舞台アグリイノベーションでは、生産者の安定した農業経営を実現するために、コメの全量買取制度を導入している。同社は、契約農家に対し全量の買取を保証することで、契約農家が安定した農業経営と適正利潤を確保できるよう配慮している。 舞台アグリイノベーションの挑戦 46

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