被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント 今後の課題と挑戦 【名 称】 株式会社千田精密工業 【住 所】 岩手県奥州市前沢区五合田19-1 【代表者】 代表取締役 千田 伏二夫 【連 絡】 TEL:0197-56-2464/FAX:0197-56-2418 【 H P 】 http://www.chidaseimitsu.com/ 【 E-mail 】 maesawa@chidaseimitsu.com 持てる技術を 活かせる分野、新たな挑戦の探求 東日本大震災を受けて岩手県が策定した復興実施計画には、世界最高・最先端の電子・陽電子衝突型大型加速器を有する大規模研究施設である国際リニアコライダー(ILC)の誘致が盛り込まれている。千田精密工業は現在、この実験機の技術開発を進めている研究機関から依頼された「実験機の心臓部となる装置の製造」という最難関の案件に取り組んでいる。FSWの技術がなければ受けられなかった仕事だ。 また、これまで関わってきた半導体製造装置や自動車といった分野とは異なる領域からの依頼にも、「まだまだ未開発の領域がある。今持っている技術が活かせる他の分野を探したり、新しい挑戦を求めてさらに情報収集に力を入れる事がとても重要だ」と、改めて千田氏は感じている。 技術の継承と技術者の育成 千田精密工業では、入社間もない若手の技術者には旧式の機械を利用させ、製造技術の基本を徹底的に学ばせている。複雑な設計など難易度の高い案件についてはベテランが過去の経験を活かしてサポートし、全社一丸で対応すると共に若手への技術の承継を図っている。このように従業員の技術レベルに応じた様々な設計製造を積極的に経験させることで、従業員に高度な学びの場、熟練度合いに応じた活躍の機会を与えている。 千田精密工業では新しい技術として2005年にイギリスTWI社と摩擦攪拌接合(FSW)に関するライセンス契約を締結した。 この技術を活用した製品化にあたっては、製品の品質が顧客の要求水準を満たしていることを証明しなければならなかった。一方、地域の研究施設や大学からは数値の検査結果が出されるのみであり、その結果を用いた他の製品との比較、切断しての内部構造の評価、顧客で採用してもらえる水準かどうかの判断は結局自社で行う必要があった。この検証にはライセンス契l 常に挑戦する姿勢が次の挑戦を呼び込む 1980年代後半に設備投資を積極的に行っていた頃、通常は金型を使用し造形するような部品をマシニングセンタで作製するという難易度の高い取組みを行っていた。その時、「難しい案件だが、その様なことができるのなら」と、ある取引先より紹介された案件が、F1エンジンの部品製作だった。後にこのエンジンを搭載したF1マシンが優勝を果たしたことで、千田精密工業の名は全国区となる。常に高度な技術を磨いていたこと、その取組みが認知されていたことが千田精密工業を新たな挑戦に導いたと言える。 5年の積み重ねで 新技術FSWによる製品化を実現 約から約5年かかったが、試行錯誤を繰り返し、顧客からの追加要求にも応えながら、なんとか製品化に行き着いた。長い年月をかけた努力の積み重ねが実を結んだ例である。 求められる技術の変化 現在、FSWの技術を用いた製品の売上高は会社全体の2割を超えるに至っているが、納入先である大手メーカーは厳しい競争環境の中で、常に製品の品質向上やコスト削減に取り組んでいる。千田精密工業も常に新しい技術の習得、職員の技術レベルの向上に努め、メーカーからの高水準の要求に応えていく方針だ。FSWの売上構成比の増加はこうした顧客からの期待に応えた結果の現れである。 43

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