被災地の元気企業 40
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挑戦事例 ものづくり産業、奥州市 ㈱千田精密工業はたとえ大量発注であっても単純加工に関する依頼は受けない。常に取引先から提示される難題の解決に挑戦し続けている。他の同業者には対応が難しいメーカーからの要求に応えることが、自社の存在意義であると確信しているからだ。 「社員には技術ありきではなく、お客様から相談を受ける、ということに価値を見出して欲しい」、「やれないと言わない、まずやってみる。今後もそういう姿勢の会社であって欲しい」千田氏の経営に対する考え方を端的に表現した言葉である。 ある時、あるメーカーからの難しい注文に同業者が四苦八苦し、あるいは受注自体を断念する中、メーカー担当者から、「どうせ他の業者と同じでできないだろう」と言われながらも、努力と創意工夫により、なんとか納品にこぎつけたことがあった。その後、そのメーカーからは次の機会にも相談を受け、要求に応えることができたため、さらに次の受注を得ることができ、その受注時に与えられた課題を解決することで信頼を勝ち取ることができたと言う。 「ものづくりの原点はひとりひとりが職人(技術者)であり続けることであり、その技術者を育成していくことが千田精密工業の使命である。我々は生産集団ではなく技術集団なのだ」と千田氏は言う。 取り組み(事業内容) 充実した設備と技術力、設計からの 一貫生産体制で難題にチャレンジ 千田精密工業は1979年に創業して以来、高い技術力により、ステンレスの他、アルミや銅などの非鉄金属の加工に高い実績を誇ってきた。東北では初めてとなる大型5面加工機を導入するなど最新設備の導入を進めるとともに、それらを使いこなす技術力と創意工夫で顧客からの難題に応えられる技術者の育成に特に力を入れてきた。また、少数精鋭主義で多能工を育成することで、設計の段階から切 削、研磨、熔接まで、難易度 の高い様々な要求に早期に応 えることができる一貫生産体 制を築いている。 こうした取り組みの結果、 これまで半導体製製造装置や 液晶製造装置を中心に、製作 する部品の設計段階からメー 地域に根付いて 自助、共助できる会社でありたい 「地域に根付いて自助、共助できる会社でありたい」と千田氏は言う。千田精密工業の主力生産拠点である大槌工場には幸いにも大きな被害がなかったこともあり、東日本大震災発生直後の13日夕方には工場の駐車場にプレハブ5棟を設置し、自家発電や地下水を利用できる設備を整え、一時は80名を越える 避難者を受け入れた。また、 「復興を加速させたい」と の思いから、この避難者受 け入れとは別に地元大槌町 役場への応援者用宿舎を自 費で建設し、地域の復興に 貢献した。 カーの相談を受けるなど、全国の顧客から高い評価を獲得している。 常に挑戦し続ける 技術集団の育成 難題を解決することで最高の技術集団を育成する 代表取締役 千田 伏二夫 氏 株式会社千田精密工業 ビジョン ● 確かなもの作りで、お客様に信頼される企業を目指します ● 豊かな発想が活かされる、明るい職場づくりを目指します ● 自然環境を守り、地域社会に貢献する企業を目指します 千田精密工業の挑戦 42

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