被災地の元気企業 40
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挑戦事例 水産加工・食品製造業、大船渡市 高付加価値の 水産加工品を開発し 水産加工業を魅力的に 「魅力ある水産加工業界にしたい」と意気込むのは三陸パートナーズ理事長の及川氏。三陸パートナーズは、大船渡の水産加工会社6社(及川冷蔵㈱、㈱國洋、㈱毛利、㈲コマツ商店、㈲コタニ、㈲広洋水産)が連携し、新しい水産加工品の製造販売と地域の活性化を目指して2013年7月に設立された。 及川冷蔵の社長でもある及川氏は、水産加工業の現状を、「他の業界に比べて社会的地位が低く若者の担い手が減少している」と指摘する。その要因のひとつに大手企業の下請として、魚介類を原料として供給するビジネスが大半を占めていることがあると分析する。 及川氏は、震災以前より、付加価値の高い加工商品を開発し、三陸の海の幸をブランド化していくことで、水産加工業界の社会的地位を高め、大船渡の地域経済の活性化に貢献できると考えていた。震災後、被災した水産加工会社の工場再建が進む中、「形だけ震災前に戻してもダメだ」と、及川氏は高付加価値の水産加工品の開発に挑戦することを決意する。そのためには、大船渡の水産加工会社が課題を共有して連携しなければならない。「自分と同じような考えを持つ同業者は多いはず」と及川氏は震災で工場や加工設備を失った同業の仲間に声を掛け大船渡の未来について語りあった。その結果、6人の経営者は、「自分たちはもう失うものは何もない。前に進むだけ。どうせやるなら三陸の未来のために新しい価値のあることをやろう」という意見でまとまった。 及川氏が三陸パートナーズの立上げを決意した瞬間であった。 取り組み(事業内容) ビジョン ● 高付加価値の商品提供 ● 水産加工業界の社会的地位向上 ● 大船渡の地域経済の活性化 お互いの強みを組み合わせて 商品開発を進める これまで、各社の売上の大半は卸会社への業務用加工品の販売が占めていた。各社の主力商品であるカツオのたたき(コマツ商店)、しめ鯖(毛利)、サンマの燻製(及川冷蔵)などはサイズが大きいためそのままでは消費者に販売することが難しかったが、一口サイズにスライスできる機械をもつ國洋で加工することにより消費者が食べやすいサイズの商品ができる。「お互いの強みを組み合わることで、1社ではできなかった新しい商品開発や販路の展開が可能になった」と及川氏は語る。 このようにして新たに開発した商品は、高級志向の消費者をターゲットに百貨店やインターネット上のオンラインショップで販売している。 百貨店で好評を得た 新商品 理事長 及川 廣章 氏 協同組合三陸パートナーズ 各社の強みを組み合わせ高付加価値商品を開発 「消費者が求めている商品を企画して、しっかり販売戦略を立てることがとても重要」と及川氏は語る。 モークや炙り、酢締めにした商品の詰め合わせのほか、有名シェフである熊谷喜八氏監修の「ワインに合う三陸の味」シリーズなどのギフト商品も取り揃えた。これらの商品は、東京の大手百貨店で実施した販売展示会で予想以上の好評を得た。「大手百貨店での販売実績をもとにオンラインショップを充実して、首都圏の皆様へ三陸の食を届けたい」と及川氏は意気込む。 三陸パートナーズでは、新商品として、三陸で水揚げされた新鮮素材をス 三陸パートナーズの挑戦 36

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