被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント 石頭氏がリフォーム会社の一部門として事業としてスタートさせた後、最初に大きな壁となったのが、裂き織りに利用する布の調達であった。そこで石頭氏が注目したのが盛岡さんさ踊りの浴衣だった。 持前の行動力を生かして、盛岡商工会議所のさんさ踊り実行委員会に協力を求めたところ、障がい者雇用と伝統 技術の確立という理 念が共感を呼び、浴 衣を提供してくれる 団体が相次ぐように なった。「さんさ裂 き織」の誕生である。 様々な人達に支えられ課題を解決 と感動を覚えるともに、「この人たちの働く場をなんとしてでも守りたい」と、2011年9月に幸呼来Japanを設立した。 就労継続支援A型事業所(注)の認定を受けるとともに、盛岡市から、生涯現役・全員参加・世代継承型雇用創出事業の認定を受け、会社としての事業継続の目処がついた。その後新商品の開発や人づての営業活動等の努力が実り、当初4名で始めた従業員数は現在17名となり、売上も6倍程度に成長した。 今後の課題と挑戦 新たな挑戦「Panoreche」(パノレーチェ) 「安定的に雇用を創出し地域活性化につなげたい」障がい者雇用の安定化と伝統技術の承継の両立を続けていくためには、継続的な売上の確保は重要な課題だ。 そうした中、新たなブランド事業としてスタートしたのが「Pampreche」である。イタリア語の布(pano)と耳(orecchio)を組み合わせた「布の耳」という造語で、衣料メーカー等で発生する「布の耳」、すなわち残反を裂き織りによりリユースする。この取組みが、BEAMS創造研究所およびヤフー復興支援室のプロジェクト「TOKYO DESIGNERS meet TOHOKU」への参画につながった。また、伝統工芸を用いた環境および障がい者に優しい商品開発として、「新しい東北」復興ビジネスコンテスト奨励賞を受賞している。 障がい者雇用支援制度を活用し 事業を独立 「住宅リフォーム会社の一部門として継続していくつもりで、会社設立の予定はなかった」という石頭氏の状況を一変させたのが東日本大震災の発生だった。震災後の経済環境の変化により、住宅リフォーム会社の一部門としての事業継続が困難となった。 一方、震災の翌日に出社したのは、社長、石頭氏と障がい者の方だったことが石頭氏の記憶に残っていた。仕事に対する意識の高さに驚きと 「盛岡の人は人情があり、面倒見がいい人が多い」石頭氏は最初にそう語った。今の幸呼来Japanがあるのは中小企業家同友会、盛岡商工会議所、盛岡市などの様々な人たちからの応援、アドバイスによるものだという。 石頭氏は、同友会をはじ めヒトの集まる場に積極的 に参加し自らの理念を発信 し続けている。その活動に よって、周囲から多くの共 感を呼び、事業化時、独立 時、マーケティング時など のあらゆる場面で直面する 課題解決につながっている。 裂き織りの技術の高さを発信し続け、石頭氏の理念に賛同した人のつながりのもと、幸呼来Japanの名のとおり、盛岡から全国に、そして世界に向けて発信している。 (注)通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対し、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な支援を行う事業所のこと。 【名 称】 株式会社幸呼来Japan 【住 所】 岩手県盛岡市東新庄1丁目23-30 【代表者】 代表取締役 石頭 悦(いしがしら えつ) 【連 絡】 TEL:019-681-9166/FAX:019-681-9165 【 H P 】 http://saccora-japan.com/ 【 E-mail 】 info@sansasakiori.com ANREALAGE×さんさ裂き織工房 「幸呼来Japan」のメンズジャケット さんさ踊り浴衣との出会い 35

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