被災地の元気企業 40
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挑戦事例 ものづくり産業、盛岡市 障がい者雇用と伝統技術の両立で幸せを呼ぶ 「幸呼来Japan(さっこらじゃぱん)」の会社名は、盛岡さんさ踊りのかけ声「サッコラ~チョイワヤッセ」から来る。「幸せは呼べば来るんです」と社長を務める石頭氏はいう。 石頭氏は小学校教諭などを経て、友人からの紹介で住宅リフォーム会社に転職。バリアフリー工事に携わっていた。転機となったのは2009年、岩手県内の高等支援学校を訪れたとき。生徒の作成する「裂き織り」に触れ、その完成度の高さに感動する一方で、その技術は卒業後の就職に生かされる場がないことを知った。 石頭氏は「この技術を埋もれさせるのはもったいない」と裂き織りの事業化を決意。社長に相談し、盛岡市緊急雇用創出事業の認定を受け、 2010年7月に会社の一部門として障がい者2名を含む4名でスタートした。実際に事業を開始して、その技術力の高さは、集中力と忍耐力に裏打ちされたものだと知った。 震災の影響により住宅リフォーム会社による事業継続が困難となったが、「障がい者の方々の働く場を守りたい」という思いから、石頭氏は自ら「幸呼来Japan」を設立。「このすばらしい技術を世に発信することで、雇用を創出したい」という石頭氏の思いに共感、賛同する人々の拡がりとともに、会社は成長している。 「今後も成長を続けていきたいし、続けなければならないと思っています」幸呼来Japanの成長によって障がい者雇用の創出と社会的自立、伝統技術継承・地域の活性化につなげたいというのが石頭氏の信念である。石頭氏は自身の信念を発信し、幸せを呼ぶ活動を続けている。 取り組み(事業内容) 裂き織りと盛岡さんさ踊りを融合させた 「さんさ裂き織」 裂き織りは、裂いた布を繋いで横糸として再利用した生地である。横糸に幅があるため織りには細心の注意が必要で、少しでも集中力を欠くと幅が異なったり、目飛びしたりして商品にはならない。実際に商品を手にとってみると、その色合いの美しさと技術力の高さが実感できるだろう。 さんさ裂き織りとは、この「裂き織り」の材料生地に「盛岡さんさ踊り」の浴衣を用いたものである。その商品価値は、さ んさ踊りの浴衣の色合いと、技 術力が支えている。 「さんさ踊りの浴衣によって、 色柄の美しい裂き織りができる んです」 浴衣の柄によって、出 岩手の魅力が凝縮された 「南部の灯火(あかり)」 裂き織りが活用され、その上で地元岩手の魅力が凝縮された商品が平成24年度いわて特産品コンクール岩手県市長会会長賞を受賞している。「南部の灯火(あかり)」だ。 石頭氏によると、裂き織り事業を開始する前から、いつか地元の伝統技術を集めたものを作りたいという思いがあったと いう。幸呼来Japanの「さんさ 裂き織」と岩手を代表する 伝統工芸品である南部鉄器が 組み合わされ、岩手山、石割 桜、一本桜、北上川が描かれ ている。 幸呼来Japanの挑戦 代表取締役 石頭 悦 氏 株式会社幸呼来Japan ビジョン ● 三つの力で盛岡ブランドを全国、世界に発信していく 1.伝統を形にする障がい者の力 2.伝統を伝える技術者の力 3.それを支える地域の力 来上がる裂き織りはそれぞれ異なり、世界にたった一つの商品となる。 地元の伝統文化を活用し、障がい者雇用と地域活性化に挑む 34

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