被災地の元気企業 40
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成功事例 生活関連サービス業、盛岡市・福島市・会津若松市 交通インフラを通じて 地方経済の発展を目指す ビジョン ● 成長なくして、被災地の復興と再生はない ● 交通観光分野を通して、地方経済の発展を後押し 代表取締役 松本 順 氏 みちのりホールディングスの挑戦 株式会社みちのりホールディングス グループ同士のベストプラクティスの共有により業績を向上 ㈱みちのりホールディングス(みちのりHD)は、2009年に設立され地方バス会社の経営支援を行っており、現在東北・北関東地域の5つのバス事業者とそのグループ会社を傘下に有している。 設立当初より代表取締役として、東北のバス事業の経営支援に取り組んでいる松本氏は、東日本大震災の発生直後、緊急輸送手段としてバスの出動要請がグループ各社に次々と舞い込む事態に直面する。松本氏は社会的使命と社員の安全確保というギリギリの選択を迫られたものの、出動を決断。原発事故や激しい余震が続く緊迫した状況の中でありながら、現場では運転手をはじめ誰一人出動を拒否する者はいなかった。全員が強い使命感を持ち、過去に例を見ない数の乗客を臨機応変に輸送するという緊急オ ペレーションを成し遂げた。松本氏は、「この経験を通じ、交通インフラの重要性を再認識するとともに、現場の力をより信じるようになった」と振り返る。 「被災地は、産業の停滞と少子高齢化という全ての地方が抱えている課題が、震災により顕在化した地域」と松本氏は言う。そのような課題を抱えている被災地で、同社は「成長なくして再生なし」というビジョンのもと、「公共交通ネットワークの最適化」「地域の観光産業への参画と貢献」「環境適応型の新しい交通システムの確立」に取り組んでいる。人口減少時代の地方経済の発展を交通インフラの側面から後押ししていきたいとする同社は、今後の地方経済の持続的な発展のために有効な取り組み方法を提示していると言えるだろう。 取り組み(事業内容) 着地型営業によるバスの旅の企画提案 「バスは、着地型営業(出発地ではなく旅行先となる地域側が主体となり、その地域の良さをアピールし、プランを立てて集客力向上につなげること)が本来の姿」という考えのもと、路線バスで観光先を訪れる「小さな旅」の提案を行ったり、三陸では閑散期となる冬に名物である毛ガニの食べ放題キャンペーンをグループの観光ホテルと協力して企画したりするなどの取り組みを行っている。また、海外の観光客誘致の取り組みとして、雪景色など日本らしい冬をアピールした旅行企画を台湾で販売するなど、バスの醍醐味と地域の特性を活かした旅行プランを国内外へ発信している。その結果、グループ全体の旅行商品の売り上げ実績は、震災・原発による風評被害の影響を乗り越え、2014年には出資前に比し約15%増加した。 震災ツーリズムの本格展開 被災地への訪問客は震災後ボランティア活動を目的とした人々も多かったが、そのような乗客は減少傾向にある中、被災地のグループ会社では教育面の要素も組み込んだツアーを企画するなど新たな取り組みを本格化させている。具体的には、修学旅行等で行われる広島・長崎での「平和学習」のように、防災教育などの「震災学習」を提供した社員旅行などを企画している。既に大企業などから新人研修のプログラムとして組み込みたいという依頼を受けるようになっており、これまでに31社の企業に活用され好評を博している。 みちのりHDは、傘下のバス会社グループの様々な事業内容のうち、特に以下の取り組みに力を入れている。 28

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