被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント 植物工場の導入をきっかけに 風評被害を克服 震災発生直後の2011年度は、風評被害によりJA東西しらかわの農畜産物の売れ行きは著しく減少した(下表参照)。「風評被害を払拭し福島県産の安全・安心な農産物を届けたい」という想いから、鈴木氏は人工光型植物工場の導入に踏み切った。なお、植物工場の設置にあたっては、総事業費2億6千万円のうち一部事業費について東日本大震災農業生産対策交付金の補助を得たことが財務的な面で大きな後ろ盾となっている。 この取組みは各種メディアに取り上げられ、JA東西しらかわの「みりょく満点ブランド」の認知度向上にもつながった。この成果として、2012年度には早くも震災前を上回る水準にまで販売高を引き上げることに成功した。放射性物質に関する消費者の懸念に訴求するためには、安全・安心であることが明確かつ容易に理解されることが重要と再認識した。 6次産業化の取り組みで 農家の販路の多様化を実現 JA東西しらかわの管内には、風評被害により販路が絶たれたり、低すぎる価格での販売を余儀なくされたりする農家が多く存在するという課題を抱えていた。この課題を解決すべく、JA東西しらかわでは、ファーマーズマーケット「みりょく満点物語」をオープンし、福島県内のJAで初となる直売所の農産物を使用したレストラン「山ぼうし」を併設、また、管内酪農家の牛乳を用いた「ミルク工房」でソフトクリームや牛乳等を販売するなど、6次産業化に乗り出した。この取り組みにより、「みりょく満点ブランド」の農産物のおいしさや安心・安全さを伝えることはもちろん、レストランのシェフによる地域野菜をふんだんに使った独自のメニューを通じ、消費者に新たな食の楽しみを提案している。こうした新たな需要創出の仕組みづくりにより、2013年3月にオープンした「みりょく満点物語」は、2014年12月時点で来場者数30万人、売上4億7千万円を達成しており、JA東西しらかわ管内で栽培された農作物の販路確保に一定の成果をあげている。 今後の課題と挑戦 【名 称】 東西しらかわ農業協同組合 【住 所】 福島県白河市表郷金山字長者久保2番地 【代表者】 代表理事組合長 鈴木 昭雄 【連 絡】 TEL:0248-32-1031/FAX:0248-32-1033 【 H P 】 http://www.touzai7.com/ 「機能性表示」規制緩和への対応 食品産業を巡る環境変化として、2015年4月から機能性表示制度が緩和される予定だ。これを機に「みりょく満点ブランド」の商品の特徴をより明確に消費者に伝えるために、JA東西しらかわでは、外部機関からの客観的な指標の取得などによる機能性表示を現在検討中である。 次世代に農業をつなぐ 福島県の農業は生産性低化と、放棄耕作地の増加という課題を持つ。この課題はいずれも就農者の高齢化と就農者数の減少が一因であり、次の世代が安心して農業を生業とすることができるような対策が必要である。JA東西しらかわl では、畜産事業の一環として先進的畜産モデル の実証と、放棄耕作地を利用した飼料用農作物の生産に取り組む。それぞれ、生産性向上による農家所得の増加と、環境保全及び農家への安定した飼料提供という狙いがある。福島の農業を再生させ、未来の農家にバトンを渡すため、JA東西しらかわは走り続けている。 年度別販売高(単位:百万円)センター2010201120122013米穀 1,698 926 2,217 1,675園芸 1,630 1,480 1,297 1,464畜産 535 483 577 859合計 3,863 2,891 4,092 3,999出典:JA東西しらかわ ディスクロージャー誌(2010~2014年版)品目年度みりょく満点物語 (農産物直売所) 山ぼうし (レストラン) 27

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