被災地の元気企業 40
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成功事例 農林漁業、白河市 農業の再生によって 地域を活性化する 「JAが自らリスクを取ってでも地域の農業を守り、地域活性化に貢献することがわれわれの目指す姿です」 東西しらかわ農業協同組合(JA東西しらかわ)は福島県白河市に本店を置く農協である。福島県の農業は高齢化が進み、さらに震災の影響もあって一人当たり出荷量が少なく、放棄耕作地の面積が大きいという課題を持つ。この課題を放置すると、農家所得の減少や、病害虫の発生・地域環境の悪化につながる。JA東西しらかわの管内は農業を生業としている住民が多く、農業を守るという組合の役割が、地域そのものを守ることに直結するのだ。 組合長の鈴木氏は「農業は人間が生活するために絶対に必要な仕事だ。JAの存在価値は生産から消費まで効率的な運用をすることである」と語る。この想いから、JA東西しらかわは販路の確保・農業インフラの整備といったJAの一般的な事業にとどまらず、活動領域を積極的に拡大させている。そのひとつとして自らモデルケースとして先進的な技術を導入し、地域の農家に展開するという活動を行っている。また、「農業とは野菜を育てることだけではない。機能性が高い野菜を育てることで、人間を育てることだ」という想いから、野菜が本来持つ栄養価を高めるなど、高付加価値の農業を目指す。JA東西しらかわは、これらの農業振興、人材育成を通じて地域を活性化させることに挑戦している。 みりょく満点ブランド JA初の人工光型植物工場導入 またJA東西しらかわでは、自ら植物工場を建設し農作物の生産を手がけている。JAが大規模な工場を自ら保有し、生産するのは全国初の事例だ。この工場は完全密閉型の人工光型植物工場で、ここで生産される作物は、①完全無農薬 ②洗わずに食べられる ③栄養価が高い という特徴がある。 現在、植物工場では数種類のレタスを生産し、主に外食業者向けに契約販売を行っている。価格は露地栽培のレタスに比べて若干高いものの、季節や天候に左右されずに安定供給できる点が 福島農業の再生に道を拓く農協の取り組み 代表理事組合長 鈴木 昭雄 氏 東西しらかわ農業協同組合 ● JA自ら挑戦する ● 先進的技術を導入し、管内の農家に展開する ● 福島の農業の復興に貢献する 取り組み(事業内容) ビジョン 東西しらかわ農業協同組合の挑戦 外食業者のニーズを捉えている。また、洗わずに盛り付けることができるため、販売先の業務効率化(人件費の削減)につながるとの声も届いている。 「みりょく満点ブランド」とは「命のもととなる農産物づくり」という想いからJA東西しらかわが立ち上げた独自ブランドだ。同ブランドの農産物は、化学肥料(通常使用量より20%)および農薬(同30%)の削減を掲げ、食物が持つ本来の機能性成分(ビタミン・ミネラル・食物繊維等)を高め、安全・安心な農産物づくりを目指す。このための工夫のひとつとして、JA管内で採掘され、天然ミネラルが豊富で、土壌の保肥力を高める効果がある貝化石を一定量含む肥料の利用を推進している。こうした取り組みを地域に広げるために、JA東西しらかわではきめ細やかな営農指導 に取り組み、生産 者のレベルアップ とモチベーション 向上を図っている。 26

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