被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント 理念の共感によって定着率の向上を図る 第二の創業を果たしたものの、従業員の確保が急務であった。従業員を集めるためには、会社のイメージアップが重要と考え、作業着のデザインをはじめ、工場全体のデザインに統一感を持たせたほか、地元のスポーツチームのスポンサーにも名乗り出た。こうした取組みが奏功し、震災後人材確保が困難な福島にあって人員を確保することに成功した。しかし、当初は低い定着率が課題であった。 池本氏は経営理念が共有されないことによる採用する側とされる側の期待ギャップが原因と考え、WEBサイトでは自社の欲しい人材をはっきりと記載したほか、経営理念を漫画や書籍の形で配布し浸透を図るなど、徹底して自社の理念に共感できる人材の採用を目指し、その結果、定着率の改善を実現できたのである。 社員の想いと経営理念の一致 採用や人材育成、人事評価などの会社の方針には池本氏の一貫した想いがある。それが、冒頭の社是「道理再来」である。明確なビジョンを掲げた結果、戦略と打ち手が整合することで事業成長のシステムとして機能した。経営理念の共有と社員の巻き込みに成功した理由の一つは、社員全員の夢を凝縮した「未来予想図」の製作にあった。出来上がった未来予想図は社内に掲示し可視化することで全員の想いが一つとなっている。 今後の課題と挑戦 福島を再生させ子供が夢見る一流企業に 「ナプロアース出身の人なら採用したいと思われる会社にしたい」と池本氏は語る。そして、「社員の子供や孫にも入社を薦めたい企業になるのが今後の夢」である。 池本氏は震災後の心境の変化について「この海が僕たちの価値観・人生観を変えた。でもただ一つだけ変わらないものがある。それは福島が好きだという気持ち」と語る。 「上場できる会社になって、自社の活動を通じ福島のイメージアップも図りたい」池本氏は愛する福島に希望の未来を描く。 【名 称】 株式会社ナプロアース 【住 所】 福島県伊達市梁川町やながわ工業団地 63-1 【代表者】 代表取締役 池本 篤 外部専門家やITの活用で 未経験者を即戦力に 現在は震災後に入社した社員が50人以上いるが、彼らがどのように業務を習得し、売上回復に に至ったのか。池本氏が活用したのが外部のコンサルタントなどの専門家の知恵であった。例えば、廃車を引き取る際に、車種によって1台あたり利益が概ね把握できるようになり、売れる部品だけを廃車から外すことの見極めが誰でも出来るようになった。ITを活用して経験が浅い人でも一定の仕事の質を確保できるような仕組みを構築したのだ。 また池本氏は「会社が成長するには社員に人としての魅力がなくてはならい」と話す。 ITシステムや業務の仕組みだけでは他社に模倣される。人材こそが他社が模倣できない会社の強みとなると思ったからだ。人材育成の取り組みとしてあげられるのは、 ①OJTに過度な依存をしl ないためのマニュアルの充実、②社員と会社のコミュニケーションミスをなくすための評価制度の構築、③挨拶などの基本からボランティア活動まで幅広い従業員教育および研修の3点だ。評価制度は専門力よりもチームワークなどの人間力を重視して評価するとはっきり提示するなど、何を達成すればどのランクに昇格できるかを明確にした。また、「300評価」という詳細な評価項目を設けることで客観性を持たせ、さらに求められる能力を獲得するための研修も用意することで、公平性を確保している。 【連 絡】 TEL:024-573-8091/FAX:024-573-8092 【 H P 】 http://www.naproearth.co.jp/ 【 E-mail 】 info@naproearth.co.jp 25

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