被災地の元気企業 40
26/126

「道理再来」 福島の地で輝き続ける 「道理再来」とは「武士道を道理として守り、リサイクルの道を究め、未来に渡って子供たちに夢を与える企業になる」という意味を込めて震災後に作った社是である。 池本氏は生まれも育ちも福島県南相馬市の生粋の福島人である。㈱ナプロアースは1996年に池本氏が福島県双葉郡浪江町に設立。当初は中古のタイヤ・ホイールを販売していたが、業績は伸び悩み、会社存亡の危機に廃車パーツの販売に賭ける。当時、同業他社はリサイクルできそうな部品のみを引き取っていたが、業界の常識を破り廃車を全て引受ける方針とすることで、自動車ディーラー等の顧客が廃車を回してくれるようになった。加えてアジア市場の勃興も追い風となって、廃車から出る鉄くずが資源として価値を持つようになり、会社は急成長を遂げた。 2006年にはニュージーランド、2010年にはサモアに子会社を設立。海外進出も果たしリサイクル部品の販売と廃車処理事業を強化すると同時に新しい取り組みも始めて万事順調に思われたその時、東日本大震災が池本氏そしてナプロアースや福島の運命を変えた。 取り組み(事業内容) 企業と福島の再興を賭けた第二の創業 原発事故により本社に戻ることができず、震災で工場も大きな被害を受け、全てを失い残ったのは借金5億円だけであった。一時は茫然自失となったが、スタッフや同業他社の助けもあって前を向くことができた。従業員が県外に避難し離散してしまうのを防ぐため、いち早く福島県内での事業再開を目指し、震災の翌月には池本氏は新工場の場所を探し始めた。震災後の混乱が続く中での場所探しは難航したが、伊達市梁川町の工業団地に偶然使われていない工場の建物があり、運よく居抜きで取得することができた。まだ支援制度が整備されていない中、必要資金は自らかき集めて調達した。 震災前の経営手法を180度転換 震災前は業績が好調で、巷では「業界の風雲児」などと言われ、「思い上がり・慢心があった」と池本氏は語る。しかし、震災で社員の生死の危機に直面したときにこれまでの社員に対する接し方への反省と後悔の念が生まれた。さらには、同業他社が事業再開に力を貸してくれ、その中には以前に付き合いを断った業者も含まれていた。 「涙が出るほど感謝すると同時に、穴があったら入りたい気持ちでした」と池本氏は語る。 これを契機に以前の経営方法は全て捨てた。多くの従業員が県外に避難したため、震災前から働いていた社員は少なくなったが、「和の精神」「結の精神」「武士道」という新たな経営理念のもと第二の創業を果たした。その後、会社は1年で震災前の売上を回復するまでに成長することになる。 ナプロアースの挑戦 代表取締役 池本 篤 氏 株式会社ナプロアース ビジョン ● リサイクル事業を通して、環境、人類、社会を守り、 次世代に継承する ● 武士道を道理として守る ● 未来に渡って子供たちに夢を与える 成功事例 新天地で新たな経営理念を共有し短期間での売上回復に成功 ものづくり産業、伊達市 24

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です