被災地の元気企業 40
25/126

課題克服のポイント 自社船の取得でカツオの安定調達を図る 震災以前より明豊の課題となっていたのは、加工品の原料となるカツオの安定調達だった。マグロの街である塩竈において、カツオの水揚げは多くはなかったが、東日本大震災による影響でカツオの供給量が更に減少、カツオの安定調達は喫緊の課題となった。この解決策として浮上したのが自社船を購入し自社で漁獲を行うことだった。しかしバリューチェーンを拡大することとなる自社船の所有には漁獲量の変動やコスト負担など多大なリスクも伴う。迷う松永氏を後押ししたのは、従業員への思いと恩師の言葉だった。震災後、先が見えない中で「この先も従業員を養っていかなくてはいけない。そのためには今まで通りのやり方で良いのか」という思いが強くなった。また恩師と仰ぐ㈱塩釜魚市場の渡部健前会長からは「人と違うことをやるべき。協力は惜しまない」との言葉をもらった。 従業員のため、塩竈のため、前に進むしかない―松永氏は自社船での漁獲による原料の確保を決断した。 オール塩竈での取り組みで塩竈の 水産業を支える 漁船の取得は、「オール塩竈で」という松永氏の思いに共感した渡部前会長の力添えもあり、㈱塩釜魚市場と共同で設立した明豊漁業㈱を通して行った。「第22明豊丸」と名付けられたこの漁船は2013年6月に塩竈港に初水揚げし、現在では加工原料となるカツオ・ビンチョウマグロの約半分を供給している。このように安定的な原材料の調達が可能になったことが強みとなり、大手小売業者との取引拡大につながった。 また、第22明豊丸には「宮城県塩竈市」の文字が刻まれている。他港所有の漁船が多く水揚げに来航する塩竈にあって地元漁船は稀有な存在だ。「塩竈の船が塩竈港に入ってくることに意味がある。塩竈の漁業を支えることで塩竈の水産業界全体を支える手助けになれば」と松永氏は塩竈に対する熱い想いを語る。 今後の課題と挑戦 みやぎ塩竈ブランドのおいしさを全国へ 「最新鋭の工場の完成・稼動、自社船の購入・水揚げ開始と準備は整った。塩竈の船で塩竈港へ水揚げした、みやぎ塩竈ブランドの日本一おいしいカツオのたたきを全国へ届けたい」と松永氏は語る。そのために、まずは既存の東北・北海道エリアの販路を強化し、さらに首都圏へ販路拡大を目指す。東北・北海道に対しては大手小売業者を通じて商品供給を促進する。2014年11月には東京営業所を開設し首都圏へ販路拡大を図る体制を整えた。 次世代への仕組みづくりを 明豊の取り組みは塩竈全体の活性化にも繋がっている。震災後に売上、従業員数ともに大きく増加した。「会社を元気にし、従業員を元気にすることで塩竈全体を元気にしたい」と地域貢献への想いは強い。 また、今後の大きな目標の一つは「今後、水産資源が減少していき水産業が衰退していくといわれているが、貴重な水産資源を守ることで次世代に継承していける仕組みづくりに挑戦し、水産業に恩返しがしたい」と松永氏は意気込む。 【名 称】 株式会社明豊 【住 所】 宮城県塩竈市新浜町2丁目9-34 震災前 冷蔵保管 加工(@旧工場) 梱包 出荷 購買仕入 震災後 冷蔵保管 加工(@新工場) 梱包 出荷 塩竈魚市場 購買仕入 明豊丸による漁獲 【代表者】 代表取締役 松永 賢治 【連 絡】 TEL:022-362-5141/FAX:022-362-5188 第22明豊丸 23

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です