被災地の元気企業 40
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な資金調達に際し必要な事業構想、事業計画のブラッシュアップを支援するため、㈱海楽荘の事例では前述の人材育成道場のメンターのほか、中小企業基盤整備機構の震災復興支援アドバイザーといった公的機関から派遣される専門家からのアドバイスが行われている。 また、立ち上げ期の事業においては、周囲の支援により㈱re:terraのように在庫保有に伴う資金負担を回避したり、Olahonoプロジェクトにおけるオーナー販売制度のように事前に資金を確保する方法を検討することも有効と考えられる。 3-2-2.成長・拡大期の課題 (1)技術・生産能力 ①課題の背景 新たな商品やサービスが市場で一定の評価を得ると、次に市場のニーズに応えられるだけの生産能力の確保が克服すべき課題とする事業者が多い。同時に事業の発展に必要な商品・製品開発力向上のために技術力の向上が課題と捉えている事業者も多い。これら生産能力の確保や技術力の向上という課題を克服するためには、外部との連携や支援制度の活用のほか、社内における人材育成も重要な要素であり、後述する組織的経営体制の構築との関係性も深くなっている。 ②事業者の克服方法 生産能力の確保に向けたユニークな取組として、雇用機会の確保のために採用した技能習得途上の従業員でも生産可能な商品を開発した㈲オイカワデニムの例や、設備の共同保有により個社では難しい生産能力の向上を目指す気仙沼造船団地協同組合などの対応が見られる。また、㈱明豊のように、原料の安定調達のために自社船による漁獲という方法でバリューチェーンを拡大し、生産能力の確保を実現した事例もあり、地元自治体や経済団体、地元のリーダー的人物等が関係者の調整等において重要な役割を果たす例も見られる。 一方技術力の向上という観点からは、外部研究機関(大学など)との連携は製造業を始め多くの事例で活用されているほか、㈱千田精密工業のようにベテランが若手をサポートし少数精鋭の多能工を育成することで技術伝承を図っている事例や、ヤグチ電子工業㈱のように、従業員に大学研究者・顧客などの外部関係者と接する機会を与え、新しい取り組みへのチャレンジ精神を持たせることで技術力の向上に繋げている事例も見られる。 被災地の事業者が単に震災前の姿に戻るのではない「創造的復興」を成し遂げるためには、自社の強みを生かしつつ弱点を補うような地元企業間の連携は有効と考えられる。各社の利害調整も必要であり必ずしも実現は容易ではないが、地域のリーディングカンパニーの創出を導くような支援のあり方も今後の課題と考えられる。 115

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