被災地の元気企業 40
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コラム復興における金融機関の役割監修委員橋本哲実東日本大震災では、生活・社会インフラや住宅、産業関連施設等の資本ストックで16兆円余りの被害があったと推計されている(平成23年4月、弊行推計)。迅速な被災地の産業再生のため、各種インフラの早期復旧や各種補助金など国や地方公共団体による幅広い支援措置が講じられた。震災後の復旧段階では公的支援が重要だが、地域経済・産業の本格的な復興には、民間の主体的な活動を伸ばすことが肝心であり、金融機関の役割は大きい。日本政策投資銀行では、被災各県において地方銀行(岩手銀行、七十七銀行、東邦銀行、常陽銀行)と共同で震災復興ファンドを設立し、被災企業へのリスクマネー供給に加え、ビジネスマッチングや市場開拓等により投融資先の企業価値向上に取り組んできた。さらに、復旧段階から復興・成長段階へと移行しつつある中、これまでの地方銀行に加えて地域経済活性化支援機構とも連携し、新たなファンドを岩手、宮城、福島の各県で昨年12月に創設した。新ファンドは、最大合計300億円までの規模拡大を視野に入れており、被災企業に加え復興に資する投資を行う域外企業にも支援対象を拡充している。個別企業の成長に加えて、業界構造の課題解決等にも貢献していきたいと考えている。被災地の産業振興やまちづくり等を考えていく上では、行政単位を越えた連携を図り、地方公共団体、企業、金融機関など地域の関係者が認識を共有し地域の強みを活かして自立を目指す戦略を策定し、かつ推進・実施主体として機能するプラットフォームの形成が求められる。その推進のため、金融機関には地域の諸課題を客観的に分析し、目利き機能を発揮して各種施策の策定をサポートする地域コーディネーターの役割も期待される。また、各金融機関が強みを活かしつつ相互に連携し、BCM(事業継続マネジメント)支援やクラウドファンディングなど新しい金融手法を活用していくことも重要である。「サメの街気仙沼構想推進協議会」と秋保温泉の旅館料理人とのマッチングにより健康食材としてのサメ肉を活用したメニューを開発(株式会社日本政策投資銀行常務執行役員)106

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