被災地の元気企業 40
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今後の課題と挑戦 課題克服のポイント 事業環境の変化に応じて 自社の技術が生かせる市場を見出す 地域観光に特化したパッケージで ニーズを掘り起こす 会津ラボは、設立後、順調にセキュリティ診断システムの研究開発を進めていた最中にリーマンショックに見舞われる。このため予定されていた資金調達が困難となり、開発が頓挫してしまう。「この頃が会社として一番厳しい時期だった」と久田氏は振り返る。 会社の生き残りを賭けて受託開発の営業で首都圏を飛び回っていたその頃、スマートフォン用のアプリというそれまでになかったビジネスが生まれる。自社の強みであるソフトウェア開 発の高い技術力を生かせる絶好のフィールドと考えた久田氏は、会社の事業の中心をスマートフォン用のアプリ開発へと転換、最初に取り掛かったのがナビアプリの開発であった。程なくして、自らのユーザーとしての目線と最先端のAR技術を融合させた画期的なナビアプリ「指さしナビ」が完成した。 目的地までのルートをしばらない指さしナビは観光地での散策に最適なアプリと言えたが、リリース後も反応は少なかった。他のナビアプリとの違いがユーザーには伝わらなかったからだ。 そうした中、久田氏は、近隣自治体が東日本大震災による影響で観光客減少に頭を悩ませていることを知る。そこで、観光に最適な指さしナビにご当地キャラクターを組み合わせたら観光客に喜ばれ、地域の観光振興の一助となるのではないかと考えた。こうして、近隣自治体と連携して地域観光に特化した指さしナビに生まれ変わった。 久田氏が営業上の工夫として、初期費用を安く抑えるパッケージを採用したところ、近隣の自治体にも導入が広まり、ご当地キャラクターが方角を指し示す指さしナビは福島県内を中心に現在15市町村(会津若松市、下郷町、会津美里町、会津坂下町、湯川村、猪苗代町、福島市、二本松市、伊達市、本宮市、国見町、大玉村、桑折町、川俣町、鳥取県鳥取市)で導入されている。利用者からは、「地図を読むのが苦手だけど、これは使いやすい」と評価が高い。今後は初期費用を抑えつつ、保守費用を受け取るモデルにして行きたいと考えている。 首都圏への人材流出を食い止める 久田氏は、自らが大学で教鞭を取っていた経験を活かして、人材育成にも力を入れている。緊急雇用創出事業補助金を積極的に利用しつつ、未経験者であってもソフトウェア開発への熱意があれば積極的に採用している。 社内で教育しスキルアップを図ることで、将来は会津大学の卒業生を始めとした県内外の優秀な学生が「会津ラボに入りたい」と思うような魅力的な会社になることを目指している。それを実現することで、会社はもちろん、地域にもプラスとなると考えている。 世界で通用する製品・サービスを 会津から発信する 会津ラボの5年後の目標として、久田氏は「社員100名、売上高30億円」を挙げる。 久田氏が目指す会津シリコンバレーの実現には会津に核となる企業が必要であり、会津ラボがその核となる会社にならなければならないと考えているのである。 そのために、会津ラボはグローバルネットワークを拡大し、国内海外問わず競争可能な製品を開発することを今後の課題に掲げている。2014年11月には、携帯電話・スマートフォン向けコンテンツの制作・販売を主業とする東証一部上場企業、日本エンタープライズ㈱のグループ会社となり、経営基盤を確固たるものとした。 「会津シリコンバレー」の誕生を目指す久田氏の視線は会津から世界をしっかり見据えている。 【名 称】 株式会社会津ラボ 【住 所】 福島県会津若松市インター西53 【代表者】 代表取締役 久田 雅之 【連 絡】 TEL:0242-23-8285/FAX:0242-23-8286 【 H P 】 http://www.aizulab.com/ 103

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