被災地の元気企業 40
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情報セキュリティを研究していた久田氏が、その研究の成果を活かして世のため人のためになるものを作りたいとの思いから、学生時代を過ごした会津若松市で㈱会津ラボを立ち上げたのは2007年のことである。会津大学発のベンチャー企業として、会津大学建学の精神である「to Advance Knowledge for Humanity」(人類の平和と繁栄に貢献する発明と発見を探求する)を経営理念として掲げ、当初はセキュリティ診断システムの開発を中心に事業をスタートさせた。 現在、会津ラボはスマートフォンアプリの開発に事業の中心を移しているが、事業領域が変わっても「世のため人のためになるものを作る」という久田氏の信念は揺るがない。これは「世のため人のためになるものを生み出すことこそが巡り巡って自社の利益になる」との考えがあるからである。 その真摯な姿勢や高い技術力に裏付けられた実績により、最近では大学や他社からの提携依頼も増えており、出版社と共同開発した「Apoli」(女子会での利用を想定したスマートフォン用コミュニケーションアプリ)や福島県立医科大学との共同研究で開発した「CPRトレーニング~心肺蘇生の達人~」(医療関係者が二次救命処置を学ぶための教育用アプリ)はその具体例といえる。 久田氏は、将来的に会津をベンチャー企業が集積する町にしたいと考えている。会津シリコンバレーの創造である。有能な人材が会津から首都圏に流出するという課題を解決し、会津を活性化させたいとの思いがあるからだ。「自社だけでなく地元のために」、ここにも「世のため人のため」という久田氏の信念が貫かれているのだろう。 会津ラボの挑戦 代表取締役 久田 雅之 氏 株式会社会津ラボ ビジョン ● to Advance Knowledge for Humanity (人類の平和と繁栄に貢献する発明と発見を探求する) ● 世のため人のためになるものを作る 挑戦事例 情報関連サービス業、会津若松市 会津シリコンバレーの 創造を目指して 高いIT開発力を武器に会津から世界へ挑戦 取り組み(事業内容) 代表作:ナビアプリ「指さしナビ」 久田氏は、既存のナビアプリの使い勝手に以前から疑問を感じていた。確かに目的地までの正確なルートは分かるが、「こっち」「あっち」といった目的地の方角と距離が分かれば町歩きには十分であり、もっとシンプルな方が使いやすいと考えていたからである。 こうした発想から、スマートフォン内臓カメラで映し出した映像に必要な情報を表示する「拡張現実(AR)」を利用したナビアプリ「指さしナビ」が完成した。 指さしナビは、スマートフォンの画面上に今自分がいる空間が映し出され、ご当地キャラクターが指定した目的地まで案内してくれるもの である。あたかも、旗を持った観光ガイドが先導して観光地を案内してくれるように道案内をしてくれるため、どんな人でも、迷うことなく目的地に辿り着くことができる。従来の地図上で目的地を示すアプリに比べると、シンプルで分かり易い画期的なアプリである。 102

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