被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
90/146

77 1.高い品質と顧客重視への徹底したこだわり 2.独自に販路を開拓してきた経験を活かして消費者が求める製品作りに挑戦 株式会社マルキン 2007年設立'1935年創業(、従業員数15人'2013年11月末現在( 事例の概要 '1(プロフィール'概要( 女川町の㈱マルキンは、1977年に同町で初めてギンザケの養殖を手掛け、以来30年以上にわたり業界のパイオニアとして販路先を地道に開拓しながらギンザケの普及に努めてきた。当社は、ギンザケ業界でギンザケの生産(養殖)だけでなく、加工・販売までも自社内で手掛ける唯一の会社である。また、ギンザケ以外にもカキやホタテの加工・販売も手掛ける。30年以上の経験で培ってきたノウハウと独自の飼料で育てられたギンザケや、黒潮と親潮がぶつかる三陸の豊富なプランクトンを食べて丸々と育ったカキは、鮮度も高く味も良いと高い評価を受けている。 '2(バックグランド'背景( 当社のギンザケが高い評価を受けるのは、その鮮度の良さである。通常の流通システムでは、選別等の工程が入り加工までに時間がかかり、どうしても鮮度が落ちてしまう。鮮度が落ちると加工段階で身割れが生じ、二級品となる。当社は養殖から加工までの一貫生産を手掛けるため、水揚げから加工までの所要時間を1時間程度に抑え鮮度の高い状態で加工している。また、生産・加工・販売までの一貫体制は中間マージンをカットできるため、結果としてコスト競争力もあがる。高い品質とコスト競争力の両立を可能にするのが当社の強みである。 しかし、震災は当社に試練を与えた。津波により当社の養殖設備、養殖魚、加工施設の全てが被害を受けた。その後、経済産業省の「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業(グループ補助金)」で加工施設を、水産庁の「養殖施設災害復旧事業」で養殖設備を復旧。生産体制を徐々に整え、震災の翌年からギンザケの養殖・加工を再開させたが、思うように売上は回復せず、ギンザケ価格は半値近い暴落に見舞われた。当社の鈴木初専務取締役は「震災後に一番困ったのは、風評被害。震災前に取引のあった顧客からは取り扱いを中止されることもあった。在庫が増え、非常に低い価格で売り払うしかなかった」と当時を振り返る。しかし、採算性の悪化展望本格実施ギンザケの用途展開カキのブランド化「黄金牡蠣」と命名生産体制の構築シーフードショーへの出展課題課題への対応準備構想・計画3.11プロトン凍結機の導入飲食店との新商品開発高品質な刺身商材としての提供を考案飲食店との新商品開発販路開拓回転寿司チェーンへの展開事例2-8 品質と顧客重視を貫く~「ギンザケ」と「黄金牡蠣」の挑戦~ 宮城県女川町 養殖ギンザケ「銀王」

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です