被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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99 事例3-15 ミシン向けモータ技術を精米機に応用~調理家電事業の創造~ 福島県須賀川市 1.部品メーカーから最終完成品メーカーへの転換 2.足りない経営資源は外部の知識や資源を適切に導入し補う 3.試行錯誤から成功のポイントを学習する 山本電気株式会社 1934年設立、従業員数130人'2014年1月末現在( 事例の概要 '1(プロフィール'概要( 須賀川市の山本電気㈱は、家庭用ミシン向け小型モータの専業メーカーとして創業した。1980年代にミシン産業が成熟化し、ミシン用モータの需要が大きく減退する中、当社はモータ技術を磨き上げ、自動車、家電、OA機器市場等の様々な市場に小型モータを供給するに至っている。その一方で、コア技術である制御技術を活かし、家庭用精米機等の最終完成品の製造販売に着手し、独自ブランドによる自社販売というビジネスモデルを確立させている。当社は震災後、完成品メーカーの生産開始の遅れと風評被害、協力会社からの金型調達の遅れ等によって2011年は売上1割減に直面したが、翌年には家電調理事業が売上を伸ばしたことで震災前の売上水準まで回復している。モータ事業の海外展開と調理家電事業の更なる拡大を目指している会社である。 '2(バックグランド'背景( 全ての製品と産業にライフサイクルが存在する以上、企業にとって永遠の課題なのが、いかに新規事業を創造するかということである。ミシン用モータの専業メーカーであった当社もまた、ミシン産業の成熟と衰退に直面し、モータ用の制御技術を生かせる調理家電分野を対象に新規事業を立ち上げた。しかし、新規事業の創造とは、経営資源を豊富に持つ大企業でも容易ではない。ましてや、中小企業であればなおさらである。しかも部品メーカーが最終完成品を自社販売するというのは難易度の高い事業創造のケースである。 当社は、1979年にモータの生産拠点を台湾に移したことを契機に、調理家電市場に参入し、精米機の生産を開始した。精米機に着手するきっかけは、ミキサーやジューサーを農協ルートで販売している時に、コメの美味しさは精米の仕方に大きく依存することを農家から聞き、精米器を家庭用に販売したら売れるのではないか、という着想を得たためである。ミシン用のモータは複雑な機構で周辺部品との摺合わせ技術が要求され、完成品の最ミシン用モータの価格競争激化課題課題への対応新製品開発商品力の向上ミシン用モータの需要減販売力の構築販売網の再構築と自社ブランド化台湾に生産拠点を移管制御技術を活かせる精米機を開発外部の知識を導入し品質機能展開OEM供給自社販売と自社ブランド化を決断モータの用途開発調理家電事業への参入を決意店頭販売撹拌式によるメンテナンスフリー化低温精米の技術開発ショッピングサイトでの知名度向上生産技術力の活用カメラ量販店での店頭販売テレビショッピングでの販売道場六三郎氏との提携事業拡大展望本格実施準備構想・計画3.11モータ事業の海外展開を加速化フードプロセッサー事業の拡大

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