被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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95 事例1-19 ゴミだったカキ殻を資源に!~環境に優しい新建材の開発~ 岩手県大船渡市 1.震災前から大学と連携、産業支援機関等からの助成・協力 2.震災をバネに事業化を加速 株式会社菊池技研コンサルタント 1963年創立、従業員数87人'2013年3月末現在( 事例の概要 '1(プロフィール'概要( 大船渡市の㈱菊池技研コンサルタントは、岩手県全域を営業基盤に道路・橋・河川等の計画設計、測量調査、地質調査解析等を行う総合建設コンサルタント企業である。当社の菊池喜清会長は、「安心して生活できる環境の整備には、自然との調和は欠かせない」とし、自然景観・環境の保持に配慮した業務の実施を心がけているという。このような環境配慮への高い意識の下、当社ではカキ殻がらが持つ機能に着目し、水産系の産業廃棄物であるカキ殻を材料とする漆喰しっくいの開発に、産学連携で取り組んだ。 '2(バックグランド'背景( 大船渡市では地域産業としてカキ養殖業が盛んな一方、むき身加工後に出る貝殻は産業廃棄物であり、その処理は地域の課題となっている。カキ殻は多数の細孔を持つ多孔質の構造であり、浮遊物質の吸収・吸着や湿気を吸収・放散する等の機能がある。菊池会長は以前からこの機能に着目し、ホルムアルデヒドやタバコのやにといった有害物質の除去や、結露の防止等に優れた建材を作れないかと考えていた。カキ殻の活用は、快適かつ健康的な住環境を実現する製品を生み出し、加えて地域の課題解決につながると判断した。当社は、岩手県、大船渡市、岩手大学、大船渡市漁協、大船渡商工会議所とコンソーシアムを組織し、2004~2006年の3ヶ年にわたり「水産バイオマス循環ビジネス創出事業」のテーマの一つとして開発に取り組んだ。コンソーシアム構成員の岩手大学との共同開発により、焼成したカキ殻粉末と光触媒である酸化チタンを混成することにより、物質の吸収・分解機能が高まるという研究成果が得られた。環境浄化機能の建材への活用を当社で検討した結果、壁の漆喰への応用を思いついた。こうして、有害物質の吸収と分解、吸放湿、減菌等の機能性が高いカキ殻漆喰の開発に至った。 コンソーシアム終了後、当社はカキ殻漆喰の事業化推進のため新部署(水産バイオマス事業部)を立ち上げ、担当役員として菊池会長が同部を牽引することとなった。事業化の準備として2007年、「光触媒と牡蠣殻を利用展望本格実施準備構想・計画課題課題への対応3.11カキ殻の処理環境配慮型製品への応用産学官コンソーシアム組成資金調達産業支援機関等からの助成製品開発岩手大学との連携製品試験・モニター施工事業中断事業推進の強い意志商工会議所の支援マーケティングホテル新設対応販売戦略生産体制整備

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