被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
102/146

89 事例1-9 大槌・吉里吉里の新工場から新しい事業を発信する! 岩手県大槌町 1.岩手銀行とともに歩む事業再建の道 2.地域と連携しつつ、被災の経験を活かした課題解決型のモノづくりに挑戦 株式会社山岸産業 1996年創立、従業員数13人'2013年11月末現在( 事例の概要 '1(プロフィール'概要( 大槌町の㈱山岸産業は、関東圏に顧客基盤を有し、高品質、短納期を強みとするプレート加工事業を手掛ける会社である。2006年、吉里吉里に新工場を立ち上げたことで、特殊鋼やアルミのプレート製品にも着手できるようになり事業拡大を図ったが、リーマンショックを境に急激に収益が悪化。その後、経営改善計画を基に収益改善に努め、リーマンショック前の水準に着実に回復しつつあった矢先に津波に見舞われた。 '2(バックグランド'背景( 津波により築5年足らずの吉里吉里工場は全壊。約2億円の設備復旧費用のうち、1.5億円は経済産業省の「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業(グループ補助金)」、残りは「被災中小企業・施設整備支援事業(高度化スキームによる貸付制度)」を活用し、2012年11月の新工場完成にようやくこぎ着けた。また、借入金過多を解消するため東日本大震災事業者再生支援機構の債権買取制度も活用。当社は、メインバンクの岩手銀行から新規融資のみならず、再建に向けて活用可能な各種制度の情報提供を度々受け、既存事業の再建に取り組んだ。当社の山岸千鶴子専務は「岩手銀行さんには様々な局面で多くの有益な助言をいただいた。当社の再建において頼りになるビジネスパートナーであった」と振り返る。 企業に対して製品を販売するいわゆるBtoBビジネスを手掛ける部品メーカーでは、顧客である機械メーカーの生産量の増減に収益性が大きく左右されることが多い。そのため、受注量の安定化のために幅広い顧客基盤を持つと同時に、長く取引できる顧客数を増やすことが経営上の課題の一つである。受注生産型のプレート事業を手掛ける当社もその例外ではなく、震災前から収益性の安定化が課題であった。これに加え、震災は既存顧客の取引減尐という新たな課題をもたらした。受注生産型ビジネス特有のリスクと取引量の減尐という課題に対して、当社は震災直後から受注業務を継続し、製造を内陸の協力企業に外注することで取引先をつなぎとめた。また、工場再建後に敬遠されるステンレスに原料を特化することで加工効率を高める対策を講じた。他方、既存のプレ設備復旧課題課題への対応新製品開発販売力の強化事業再建'売上減、収益力減(岩手銀行からの情報提供岩手銀行からの各種助言及び新規融資敬遠されがちなステンレス加工に特化展示会に出展内陸の協力会社に外注最新設備による加工効率化各種支援策活用電動アシスト三輪自転車の開発ハイブリッド発電機の開発販売力を持つ企業との連携を模索「オール・おおつち」による製品製造展望本格実施準備構想・計画3.11地元製造業と連携新製造ラインの導入新規雇用

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です